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在京外国人劇団TIPがミュージカル『Spring Awakening 春のめざめ』を英語上演


東京在留の外国人による劇団、東京インターナショナルプレイヤーズ(Tokyo International Players、略称:TIP) が、ミュージカル『Spring Awakening 春のめざめ』を、2019年10月17日(木)より中野ザ・ポケットで上演する(10月20日まで全5ステージ)。

ミュージカル『Spring Awakening』(邦題:春のめざめ)は、ドイツの劇作家フランク・ヴェデキントによる同名戯曲(1891年)をスティーヴン・セイター(台本・歌詞)とダンカン・シーク(音楽)がミュージカル化した作品だ。2006年ブロードウェイ初演で忽ち評判を呼び、2007年の第61回トニー賞ではミュージカル作品賞を含む8部門を制覇した。また、2015年にはデフ・ウエスト・シアターによる手話を用いたプロダクションがブロードウェイでリヴァイバル上演をおこなった。

物語は19世紀末のドイツを舞台とし、性への無知と大人達の無理解がもたらす若者達の悲劇を描く。「Mama Who Bore Me」、「The Bitch of Living」、「Touch Me」、「Totally Fucked」、「The Song of Purple Summer」等々、劇中ナンバーはいずれも琴線に触れる秀曲揃い。サントラのCDや音源は各種サイトにて今でも購入できる。

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各種サイトで購入できる『春のめざめ』Soundtrack CD

各種サイトで購入できる『春のめざめ』Soundtrack CD

ブロードウェイ初演時の演出はマイケル・メイヤー、振付はビル・T・ジョーンズが担当した。主役メルキオールを演じたジョナサン・グロフ、ヴェンドラ役のリア・ミシェル、モーリッツ役のジョン・ギャラガー Jr.、ゲオルグ役のスカイラー・アスティンなど、オリジナルキャストたちはその後、テレビや映画、舞台、音楽界で大きく躍進を遂げていった。また本作品はイギリス、オーストリア、韓国、そして日本等でも各国版が製作された。日本では劇団四季が日本語上演し、初演では柿澤勇人が主役メルキオールに抜擢された。

このほど本作を日本で英語上演するTIPは、1896年(明治29年!)に東京在留の外国人によって創設され、「日本最古にして最大の英語劇カンパニー」を謳い文句としている。毎年3~4本と旺盛に上演を続けて来ており、過去には『Oliver!』『Pippin』『Avenue Q』『Chess』『The Rocky Horror Show』『The Secret Garden』『Sweeney Todd』『The Who's Tommy』といった著名ミュージカル作品から、シェイクスピア、アーサー・ミラー、モリエール、ジョルジュ・フェドー等のストレートプレイまで、幅広い作品を取り扱ってきた。

今回の『Spring Awakening』上演では、マリタ・ストライカーが演出を務め、東京在留の外国人たちが演じる。台本・歌詞のセイターもSNSを通じて応援のコメントを送っている。オリジナル英語版に触れたことのない日本の『Spring Awakening』ファンならば、一度生の舞台を体験しておく価値はあるだろう。


ミュージカル『アニー』2020の主役&孤児役が決定~新アニーは徳山しずく&川原菜摘/【THE MUSICAL LOVERS】ミュージカル『アニー』第33回

 
【THE MUSICAL LOVERS】Season 2 ミュージカル『アニー』
【第33回】ミュージカル『アニー』2020の主役&孤児役が決定~新アニーは徳山しずく&川原菜摘

 

2020年の丸美屋食品ミュージカル 『アニー』 が2020年4月25日(土)~5月11日(月)に東京・新国立劇場中劇場で上演される(ほか、各地公演も8月~9月頭を予定)。日本での上演は2020年に35年目を迎えることになる。その子役(アニー役、孤児役)オーディションの最終合格者が、2019年10月20日(日)に麹町の日本テレビ番町スタジオで発表された。アニーに選ばれたのは、徳山しずく(10歳・小学校5年生)と川原菜摘(11歳・小学校5年生)だ。以下、合格発表の模様をレポートする。

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(左から)新アニーの、徳山しずく・川原菜摘

(左から)新アニーの、徳山しずく・川原菜摘

1986年に日本テレビ主催により日本での上演がスタートした『アニー』は、66名のアニーが誕生している(うち2年連続で主演したアニー役が2名いる)。1986年の初演から2019年までの過去34年間、全国で約180万人もの観客に感動を与え続けてきたというから、まさに国民的ミュージカルと呼ぶにふさわしい。

35年目となる2020年公演は、2017年・2018年・2019年に引き続き、演出は山田和也、音楽監督は佐橋俊彦、振付・ステージングは広崎うらんが担当する。ミュージカルやストレートプレイとジャンルを超えて幅広く活躍する山田のテンポ良い演出に、佐橋と広崎の手腕が加わることで、よりいっそう魅力あふれる『アニー』となり、完売が続く人気公演となっている。2020年公演のオーディションおよび合格発表は、今年1月に竣工した日本テレビ番町スタジオにて行われた。10月20日の最終合格者発表に臨んだのは、4日にわたる歌、ダンス、演技、ワークショップ審査(身体表現、ダンス、歌を組み合わせたもの)の実技試験を勝ち抜いた約50名の子らとその家族。この中から、主役のアニー役2名(Wキャスト)、孤児役12名(Wキャスト)が決定する。なお、第一次の書類審査および課題曲「Tomorrow」歌唱動画試験を突破したのは433名であった。

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オーディションの最終合格者発表会場

オーディションの最終合格者発表会場

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昨年までの会場だったビルは取り壊されている

昨年までの会場だったビルは取り壊されている

合格者発表の定刻である夕方5時、緊張で物音ひとつしない会場へ入ってきたスタッフが「もう少しだからね!」と声をかけると、候補者がホッと笑顔を見せる。するとすぐに、山田和也ら審査員一行が到着した。

18年間という長きにわたる協賛企業である丸美屋食品工業株式会社 広報宣伝室 室長 兼 マーケティング部 部長 杉山典由は「この場にいる素晴らしきファイナリストたちの努力と稽古に敬意を表したい。それを支えるご家族の皆様、お疲れさまでした。夢が叶う人も届かない人も、ここまで努力したことは必ず役に立ちます。無限の可能性を信じて、これからも努力し続けてください」と、候補者のみならず家族へもエールをおくった。

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丸美屋食品工業株式会社 広報宣伝室 室長 兼 マーケティング部 部長 杉山典由が挨拶

丸美屋食品工業株式会社 広報宣伝室 室長 兼 マーケティング部 部長 杉山典由が挨拶

続いて演出の山田が「今年も充実のオーディションでした。充実ということは1人1人の努力や頑張りがすごいから。差はほぼありません。役の年齢などといった約束事があるだけです」と講評を述べた。10月12日(土)と13日(日)の予定だった二次審査は、台風19号の影響で13日(日)と14日(月・祝)に変更されたため、「先週の台風で皆様ご苦労があった中、みんなの努力とご家族の支援で、充実のオーディションができました」と述べる。

「さて!」と明るい声で空気を変えた山田。候補者や家族の顔に、笑顔と緊張が走る中、いよいよ合格発表となった。まずは各孤児役に選ばれた少女たちの名が告げられる。

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山田和也が合格者を読み上げる

山田和也が合格者を読み上げる

<合格者>※名前右横は受験番号

モリー役
山﨑 もも(ヤマサキ モモ)A5
矢山 花(ヤヤマ ハナ)B44

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山﨑 もも(ヤマサキ モモ)A5

山﨑 もも(ヤマサキ モモ)A5

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矢山 花(ヤヤマ ハナ)B44

矢山 花(ヤヤマ ハナ)B44

ケイト役
成瀬 綾菜(ナルセ リョウナ)B15
難波 夏未(ナンバ ナツミ)B17

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成瀬 綾菜(ナルセ リョウナ)B15

成瀬 綾菜(ナルセ リョウナ)B15

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難波 夏未(ナンバ ナツミ)B17

難波 夏未(ナンバ ナツミ)B17

テシー役
木内 彩音(キウチ アヤネ)C30
加藤 凪紗(カトウ ナギサ)C4

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木内 彩音(キウチ アヤネ)C30

木内 彩音(キウチ アヤネ)C30

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加藤 凪紗(カトウ ナギサ)C4

加藤 凪紗(カトウ ナギサ)C4

ペパー役
久野 純怜(クノ スミレ)E20
山岡 さくら(ヤマオカ サクラ)E12

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久野 純怜(クノ スミレ)E20

久野 純怜(クノ スミレ)E20

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山岡 さくら(ヤマオカ サクラ)E12

山岡 さくら(ヤマオカ サクラ)E12

ジュライ役
藪田 美怜(ヤブタ ミサト)G12
長曽我部 夢(チョウソカベ ユメ)G1

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藪田 美怜(ヤブタ ミサト)G12

藪田 美怜(ヤブタ ミサト)G12

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長曽我部 夢(チョウソカベ ユメ)G1

長曽我部 夢(チョウソカベ ユメ)G1

ダフィ役
大谷 紗蘭(オオタニ サラ)G16
宿口 詩乃(シュクグチ シノ)G22

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大谷 紗蘭(オオタニ サラ)G16(中央、赤のTシャツ)

大谷 紗蘭(オオタニ サラ)G16(中央、赤のTシャツ)

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宿口 詩乃(シュクグチ シノ)G22

宿口 詩乃(シュクグチ シノ)G22

そして、最後に2020年のアニー役2名が発表される。選ばれたのは、徳山しずく(10歳・小学校5年生)と川原菜摘(11歳・小学校5年生)だ!

アニー役
徳山 しずく(トクヤマ シズク)E48
川原 菜摘(カワハラ ナツミ) E1

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徳山 しずく(トクヤマ シズク)E48

徳山 しずく(トクヤマ シズク)E48

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川原 菜摘(カワハラ ナツミ) E1

川原 菜摘(カワハラ ナツミ) E1

なお、2020年『アニー』合格者たちは、『アニー クリスマスコンサート2019』(2019年12月21日・22日、詳細は下記公演情報欄)にてお披露目される。

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喜びを隠せない新アニーら合格者たち

喜びを隠せない新アニーら合格者たち

続いて全員で「Tomorrow」を合唱。これは、オーディションの最後を飾る恒例行事だ。曲が終わると演出の山田が全員を見渡し、あたたかい拍手を贈っていた。

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最後は全員で「トゥモロー」を合唱

最後は全員で「トゥモロー」を合唱

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フォトセッションでは、孤児たちのポーズに報道陣からさまざまなリクエストが入る。演出の山田が「正直な反応をしていいよ!『がっかりだ!』『うんざりだ!』というポーズをして!」と報道陣に混じって声をかける。オフィシャルムービーの後ろでは、振付・ステージングの広崎が、孤児たちを笑わせようとオーバーアクションをすると、音楽監督の佐橋が「いろんなポーズをしないと~!」と場内を和ませる。広崎が、アニー達が暮らす孤児院の院長ハニガンのように「地獄はこれからだ~!」と明るく檄を飛ばした。そう、これで終わったわけではない。ここからが2020年『アニー』のスタートだ。

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報道陣に混ざり新アニー&アニーズを撮影する演出の山田和也(毎年恒例)

報道陣に混ざり新アニー&アニーズを撮影する演出の山田和也(毎年恒例)

2019年アニー役の岡 菜々子と山﨑玲奈がお祝いに駆けつけ、花束とともにアニー役をバトンタッチした。

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新アニー(徳山しずく、川原菜摘)に花束を渡す岡 菜々子(左端)、山﨑玲奈(右端)

新アニー(徳山しずく、川原菜摘)に花束を渡す岡 菜々子(左端)、山﨑玲奈(右端)

新アニー2人とのフォトセッションでは、山田は「おめでとう」とぺっこり一礼してから、「触るよ」とふんわり手を添えて撮影。

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アニーは3回目の挑戦で、過去2回は書類審査で落ちたという徳山は、実技審査初挑戦でアニー役を射止めた。歌は小学校4年生から1年間レッスンをしているそうだ。「ミュージカルがとても好き。中でも『アニー』が一番好き」「アニーは希望をいっぱい持っていて、次々と人に希望を与える。私も希望を持ってアニー役をやれたら」と抱負を語った。得意なことは跳び箱とリレー、そして国語が大好きだそうだ。

アニーは3回目の挑戦で、1回目はBの組で落ち、昨年は二次審査で落ちたという川原は、小学校3年生の中頃から歌・演技・ダンスのレッスンを受けてきたという。「人前で何かやるのが好き。舞台で多くの人を笑顔にしたい」「アニーは明るくて、ウォーバックスさんを明るく元気にしていくのがいいな、と思っていて、アニーの性格が好きだった。ずっとアニー役を目指していたので、夢や希望を持った、すごく明るい可愛いアニーを演じたい」と声を弾ませた。得意なことは鉄棒、跳び箱、音楽だそうだ。

2019年のミュージカル『冒険者たち~この海の彼方へ~』で共演して、友だち同士だという新アニーの2人。川原は徳山のことを「すごく元気で、ザ・アニー」、徳山は川原を「いつも笑っていて、皆を笑顔にさせてくれる」と評し、お互いを「まさにアニーだ」と認め合っていた。それを後ろで「何?」「何?」と嬉しそうに聞いていた山田は、「これからが大変、今日くらいは楽しくいよう」と優しい笑顔を向けた。

【動画】『アニー』2020新アニー&山田和也、囲み会見より


丸美屋食品ミュージカル『アニー』は、新国立劇場 中劇場にて2020年4月25日(土)~5月11日(月)公演予定(東京公演ほか、各地公演も8月~9月頭を予定)。2020年は東京オリンピックも開催される記念すべき年だ。川原は「オリンピックがあるので海外の方も観に来てくれたらと思っています。そういう方にもわかりやすく伝えたい」、徳山は「日本語がわからないかもしれない方のために、演技で伝えたい」と頼もしい。35年目を迎える日本の『アニー』もきっと記念すべき公演になるだろう。大人キャストなどの詳細情報は、続報を待ちたい。

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丸美屋食品工業株式会社 広報宣伝室 室長 兼 マーケティング部 部長 杉山典由と新アニー

丸美屋食品工業株式会社 広報宣伝室 室長 兼 マーケティング部 部長 杉山典由と新アニー

なお、ストーリーをダンスで彩るダンスキッズのオーディションは、現在小学校2年生~中学校3年生までの男女を対象に、2019年11月6日(水)必着で募集中だ。実技審査は11月23日(土・祝)・24日(日)の2日間。アニー役・孤児役オーディションに応募していても、最終合格者以外は併願可能(再度応募用紙郵送)。また、2020年のダンスキッズオーディションに合格し、公演に出演しても、翌年(2021年)のアニー・孤児役オーディションに応募することができる。

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誇らしげで元気いっぱいな2020年の新アニーズ

誇らしげで元気いっぱいな2020年の新アニーズ

■新アニー役プロフィール

徳山 しずく(トクヤマ シズク)
・出身:東京都
・年齢:10歳(小学校5年生・2009年1月14日生まれ)
・主な過去出演作品:ミュージカル『冒険者たち~この海の彼方へ~』(2019年)月組 ジャンプ役、ミュージカル『ジョセフ』(2018年)STUDENT役

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川原 菜摘(カワハラ ナツミ)
・出身:大阪府
・年齢:11歳(小学校5年生・2008年5月29日生まれ)
・主な過去出演作品:ミュージカル『冒険者たち~この海の彼方へ~』(2019年)月組 彩乃役、ミュージカル『ズボン船長』(2019年)ネネン/峯音役

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取材・文=ヨコウチ会長
写真撮影=安藤光夫

ワッツ・オン・ブロードウェイ?~B’wayミュージカル非公式ガイド【2019年11月編】


イヴォ・ヴァン・ホーヴェ演出による『ウエスト・サイド・ストーリー』リバイバルという大作のみを残し、今月で秋の新作ミュージカルがひと通り出揃うブロードウェイ。秋の新作はそもそも期間限定公演だったり、客入りが悪くて年を越せなかったりすることが多いため、最大の開幕ラッシュである春に照準を合わせると、年1回の渡航では観逃がしがちだ。今年もその状況に変わりはなさそうで、『フリースタイル・ラブ・シュプリーム』は1月まで、『アメリカン・ユートピア』は2月までと最初から決まっているし、『パーシー・ジャクソン』は目下のところ大爆死中。『ムーラン・ルージュ!』と『ティナ』は安泰と見ているが、今月オープンの『ジャグド・リトル・ピル』はどうなのだろうか? 「私が行くまで待ってて」と念を送りつつ、そろそろ次の渡航計画を立てたい今日この頃だ。

Q.気を付けたいマナーは?

ブロードウェイの客層は基本的に、奔放なアメリカ人と玉石混交の観光客から成っているので、日本ほどマナーにうるさくはない印象。開演中に喋る、食べる、前に乗り出す、携帯を鳴らす、写真を撮るなどはわりと日常茶飯事なので(もちろん禁止はされているし、客同士で注意しあう光景はよく見かける)、お行儀の良い我々日本人は普段通りにしていれば、目くじらを立てられることはないだろう。逆に、拍手歓声指笛が大好きな人々に混じると大人しすぎて浮いてしまう可能性はあるが、無理して盛り上がる必要もないと思っている。

服装についても、本当に色々な人がいるので、めかしこみたければめかしこんでもいいし、Tシャツにサンダルで行っても追い帰されることはないという感じ。ただし、演目によっては身なりの良い紳士淑女しかいないこともあり、ミュージカルだとヴィヴィアン・ボーモント劇場の演目に要注意だ。オペラハウスやジュリアード音楽院と同じリンカーン・センター内にあるせいか、どの演目がかかっている時に行っても、わりとみんなちゃんとしていた記憶。渡辺謙の『王様と私』も、そんな上品な雰囲気の中で上演されていた作品のひとつだ。

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ザ・劇場街からはちょっと離れたところにあるリンカーン・センター

ザ・劇場街からはちょっと離れたところにあるリンカーン・センター

基本的に日本と同じマナーで臨めば問題ないと思っている中で、気を付けたいことが二つほど。一つは単純に、外国人は概して体格がいいので、前を通る人が「Excuse me」と言って来た時には身を縮めるだけではなく立ちましょうということ。そしてもう一つは、寝ないようにしましょうということ…。日本人はもともと居眠りしやすい民族(筆者調べ)である上に、日米間は時差がエグいので観劇中に眠くなりがち。防ぎようのない時もあることは身を持って経験済みだが、せめて舟だけは漕がないよう、万全の対策を施して臨みたい。

【今シーズンの新作】

■11月に始まる作品

『Jagged Little Pill』11月3日プレビュー開始/12月5日開幕
アラニス・モリセットの同名アルバムをミュージカル化。『ピピン』の演出家の最新作。
https://jaggedlittlepill.com/

 

■既に上演中の作品

『David Byrne’s American Utopia』
ミュージカルではなく「一生に一度の」「シアトリカルなコンサート」とのこと。果たして。
https://americanutopiabroadway.com/

『Freestyle Love Supreme』
『ハミルトン』のT・カイルとLM・ミランダがプロデュースする即興(!)ミュージカル。
https://freestylelovesupreme.com/

『The Lightning Thief』
ファンタジー小説「パーシー・ジャクソン」シリーズが原作。ツアーを経てBW入り。
https://www.lightningthiefmusical.com/

『ムーラン・ルージュ!』
バズ・ラーマン監督映画をアレックス・ティンバースが演出する話題作。人気沸騰中!
https://moulinrougemusical.com/

『Tina:ザ・ティナ・ターナー・ミュージカル』プレビュー中/11月7日開幕
ロンドンでの好評を受けてBW入り。オリヴィエ賞ノミネートの主演女優が続投!
https://tinaonbroadway.com/

【ロングラン作品】

■日本で既に上演された/されている作品

『アラジン』
ディズニーアニメが舞台ならではの手法で表現された秀作。魔法の絨毯もスゴイ。
https://www.aladdinthemusical.com/

『シカゴ』
オペラ座の怪人に次ぐロングラン記録を更新中の名物作。出来は割とキャスト次第。
https://chicagothemusical.com/

『ライオンキング』
開幕から20年以上経つというのに、未だ入場率がほぼ毎週100%を超える大ヒット作。
https://www.lionking.com/

『オクラホマ!』
1943年初演の名作を21世紀の解釈でリバイバル。2019年トニー賞。来年1月19日まで。
https://oklahomabroadway.com/

『オペラ座の怪人』
言わずと知れた世界的メガヒット作。圧倒的な知名度ゆえ、劇場では日本人に遭遇しがち。
http://www.thephantomoftheopera.com/

『ウィキッド』
開幕から15年が経ち、ようやくチケットに多少の余裕が。定期的に観たい傑作。
https://wickedthemusical.com/

■日本未上演の作品

『Ain’t Too Proud』
『ジャージー・ボーイズ』チームが描くテンプテーションズの軌跡。振付とキャストが最高。
https://www.ainttooproudmusical.com/

『ビートルジュース』
ティム・バートン監督映画の舞台化。原作を知らないとノリについていけない可能性高し。
https://beetlejuicebroadway.com/

『ブック・オブ・モルモン』
日本では永遠に上演されなさそうだが超絶面白い。モルモン教だけwikiで調べて観るべし。
https://bookofmormonbroadway.com/

『カム・フロム・アウェイ』
「911」の日、カナダの小さな町に起こった実話をシンプルだが力強い演出で描く感動作。
https://comefromaway.com/

『ディア・エヴァン・ハンセン』
深遠なテーマをスタイリッシュに描く、2017年のトニー賞受賞作。絶対日本でやると思う。
https://dearevanhansen.com/

『アナと雪の女王』
舞台ならではの表現が見当たらない残念作だが、生レリゴーは最高。日本での上演が決定!
https://frozenthemusical.com/

『Hadestown』
『グレコメ』の演出家が現代的に描くギリシャ神話。2019年のトニー賞で8冠を達成。
https://www.hadestown.com/

『ハミルトン』
開幕5年目にして未だ超入手困難なモンスター級ヒット作。文句なしに革新的。観るべし。
https://hamiltonmusical.com/

『ミーン・ガールズ』
同名映画の舞台化。なぜか人気。アメリカ的なノリについていける自信があればどうぞ。
https://meangirlsonbroadway.com/

『トッツィー』
主演俳優を筆頭に大変チャーミングな舞台。東宝出資中につき、日本版妄想も進む。
https://tootsiemusical.com/
 
『ウェイトレス』
同名映画の舞台化。完全に女子向け。来年1月5日でのクローズが決定。
https://waitressthemusical.com
 

【11月のミュージカルイベント】

劇場街から徒歩圏内にある世界最大級のデパート「メイシーズ」の主催により、毎年感謝祭の日に行われる「メイシーズ・サンクスギビング・デー・パレード」。アメリカ国内に数ある感謝祭パレードの中でも特に規模が大きいことで知られ、毎年NBCとCBSで生中継されるほどの“国民的イベント”だ。またニューヨークらしく、毎年いくつかの新作ブロードウェイ作品からキャストが参列したり、メイシーズ前でパフォーマンスを行うことでも有名。果たして、今年11月28日のパレードに姿を現す作品は――? 続報に注意したいとともに、もし当日ニューヨークにいるならぜひとも生で体感したいイベントだ。

https://www.macys.com/social/parade/

市村正親、久野綾希子『キャッツ』を語る(番外編)


作曲家アンドリュー・ロイド・ウェバーの代表作のひとつであるミュージカル『キャッツ』。このほど映画化され、2020年1月には日本でも公開される。これに先立ち、2019年12月11日に、ミュージカル舞台のオリジナル・ロンドン・キャスト盤の再発売も決まった。これを記念して、ミュージカルを中心に日本の芸術/エンターテインメントをリードしてきたトップスター、市村正親久野綾希子が『キャッツ』の思い出を語りあった。

『キャッツ』は1981年のロンドン初演を受けて、1983年に劇団四季により日本初演された、現在までロングラン体制を続けている不朽の名作。劇団四季在団中に『キャッツ』に出演した市村・久野の二人は、苦労話を含むエピソードや作品の深層など密度の濃いお話を語ってくれた。

その本編はCD同梱のブックレットに掲載されているが、文字数の制限もあり、割愛を余儀なくされた貴重な発言もあった。数多くの名作に出演されてきた二人だけに、興味深い経験談ばかり。そこで、ここでは番外編として、本編に収録出来なかった貴重な話が特別に掲載できることとなった。

久野は劇団四季版『キャッツ』の初演でヒロインのグリザベラに抜擢され、3年に渡り計850回同役を演じた。持ち歌である有名な名曲「メモリー」は、彼女のシグネチャー・ソングになったが、この曲を納得出来るまで歌いこなすには様々な葛藤があった。劇団四季の座内のオーディションは1983年に2回実施されたそうだ。

■『キャッツ』の座内オーディションについて

久野綾希子:ちょうど、「メモリー」の ♪ タッチ・ミー(お願い、私にさわって~)のチェンジした後の高い声のパート、Cプラスの少し高いパートを生声で出したくて、最初のオーディションの時はまだ挑戦の段階で、かろうじて受かったのですが、一か月後の二次テストの前に、軽井沢の知人の別荘を紹介して頂いて、誰もいない時に裸足で外に出て、こんもりした山に向かって、何度も「ギャー」と歌い込みました。それこそ寒稽古みたいでした。それで何とか、自分で納得出来る声が出せるようになったのです。

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グリザベラを一貫して演じた久野に対して、市村は異なる時期に異なる3つの役を演じた。様々な名作で様々な役に独自の生命を注ぎ込む彼らしいチャレンジのお話からリンクして、やはりロイド・ウェバーの代表作として名高い『オペラ座の怪人』の怪人役についても語ってくれた。

■『オペラ座の怪人』のオーディションついて

市村正親:僕が怪人(『オペラ座の怪人』)の役に決まった時、浅利慶太(演出家・劇団四季の創設者の一人)さんが、ハロルド・プリンス(『オペラ座の怪人』の演出家)に「市村はあそこまでの声は出ないから」と言ったら、プリンスが「大丈夫、稽古で出させるから」と言ったそうです。

当初浅利さんから「ラウルをやってくれ」と打診されて、彼の中には僕の中にラウルのような永遠の青年のイメージがあったようですね。他の候補の人たちは歌が上手なんですが、プリンスが「うーん、違うな」となる。そこで先ほどラウルでオーディションを受けた市村に歌わせてみて、となった。プロフィールに『エクウス』や『エレファント・マン』でフリークスを多く演じていたこともあって、僕の歌を聴いてみたいと思ったそうです。それで僕なりのターゲットを持って怪人として歌ってみました。衣装さんの部屋に怪人の素顔の写真があって、「こんな風貌であんなにきれいに歌うんだ」とびっくりしたのですが、これは猿之助の黒塚だなと気が付きました。鬼婆が本性を出す前に月影で踊っている時の気持ちで、クリスティーヌに対して歌えばいいのだなと思って臨んだのですね。

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日本のミュージカルに欠かせない二人の興味深い話の数々。ぜひ、CDのブックレットの本編も読んで頂きたい。

(構成・文:村岡裕司 ※文中敬省略)

ワッツ・オン・ブロードウェイ?~B’wayミュージカル非公式ガイド【2019年12月編】


昔から新年早々にクローズする作品が多く、見逃してはならぬとの思いから、かの有名なカウントダウン目当てでは全くなく、年末年始に行かざるを得ないことも多いブロードウェイ。今年度も『トッツィー』『ウェイトレス』『パーシー・ジャクソン』が1月5日まで、『フリースタイル・ラブ・シュプリーム』『オクラホマ』も1月半ばまでとあって、駆け付けたい気持ちはやまやまなのだが、ここは抑えて3月の開幕ラッシュを待つこととしたい。ちなみに、本連載の月刊ペースでの更新は今回までで、次回からは季刊ペース。よって1月の更新時に、3月開幕作品までを一気に紹介する予定なのでご期待いただきたい。

Q.公演情報の収集方法は?

渡航前の情報収集に最もオススメなのは、本連載でも大いに参考にさせていただいているプレイビル・ドットコム(www.playbill.com)。ブロードウェイで観劇すると必ずもらえる無料パンフレットを作っている会社が運営するポータルサイトで、公演ラインナップが非常に見やすいほか、インタビューやコラム記事も充実している。ネタに困った時の対処法なのか、時々マニアックなミュージカル・クイズなんかも。くだらないが、眠れない夜などの暇つぶしにはもってこいなので、ツイッターをフォローし、流れてきたら挑戦してみよう。

ポータルサイトはほかにも数多いが、どれも似たり寄ったりといえば似たり寄ったりなので、別の切り口での情報が欲しい時にはニューヨーク・タイムズ紙のシアターのページ(www.nytimes.com/section/theater)へ。公演の存続に絶大な影響力を持つと言われる劇評が一覧できるほか、新聞らしい社会的な記事も読むことができる。ポータルサイトにしても新聞のサイトにしても、必ずチケットが(時にはディスカウント価格で)購入できるページにリンクが貼られているところに、ブロードウェイの親切さと逞しさを感じたり。

そして渡航後、現地に着いたらぜひ入手したいのが、観光案内所や大型ホテルのロビーに置かれている無料の週刊冊子「CITY GUIDE」だ。幅広いスポットやイベント情報が掲載された総合観光案内誌だが、ブロードウェイ情報もオンからオフまでひと通り網羅されており、全作品の概要と上演時間が明記されている。筆者的には、持ち運びに便利なコンパクトサイズ(プレイビルとほぼ同型)であることと、何より劇場名ではなく作品名から辿れる劇場マップが付いているのが嬉しく、着いたらまず入手して常に持ち歩いている情報源だ。

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ミュージカルが表紙になっているものだけ集めてみた

ミュージカルが表紙になっているものだけ集めてみた

【今シーズンの新作】

■12月に始まる作品

『ウエスト・サイド・ストーリー』12月10日プレビュー開始/2月6日開幕
ヴァン・ホーヴェ(演出)とケースマイケル(振付)が名作を大胆にアレンジ。期待大!
https://westsidestorybway.com/

 


■既に上演中の作品

『David Byrne’s American Utopia』
ミュージカルではなく「一生に一度の」「シアトリカルなコンサート」。2月16日まで。
https://americanutopiabroadway.com/

『Freestyle Love Supreme』
『ハミルトン』のクリエイター陣がプロデュースする即興ミュージカル。1月12日まで。
https://freestylelovesupreme.com/

『Jagged Little Pill』12月5日開幕
アラニス・モリセットの同名アルバムをミュージカル化。『ピピン』の演出家の最新作。
https://jaggedlittlepill.com/

『The Lightning Thief』
ファンタジー小説「パーシー・ジャクソン」シリーズが原作。3か月持たず、1月5日まで。
https://www.lightningthiefmusical.com/

『ムーラン・ルージュ!』
バズ・ラーマン監督映画をアレックス・ティンバースが演出する話題作。人気沸騰中!
https://moulinrougemusical.com/

『Tina:ザ・ティナ・ターナー・ミュージカル』
ロンドンでの好評を受けてBW入り。オリヴィエ賞ノミネートの主演女優が続投!
https://tinaonbroadway.com/

【ロングラン作品】

■日本で既に上演された/されている作品

『アラジン』
ディズニーアニメが舞台ならではの手法で表現された秀作。魔法の絨毯もスゴイ。
https://www.aladdinthemusical.com/

『シカゴ』
オペラ座の怪人に次ぐロングラン記録を更新中の名物作。出来は割とキャスト次第。
https://chicagothemusical.com/

『ライオンキング』
開幕から20年以上経つというのに、未だ入場率がほぼ毎週100%を超える大ヒット作。
https://www.lionking.com/

『オクラホマ!』
1943年初演の名作を21世紀の解釈でリバイバル。2019年トニー賞。1月19日まで。
https://oklahomabroadway.com/

『オペラ座の怪人』
言わずと知れた世界的メガヒット作。圧倒的な知名度ゆえ、劇場では日本人に遭遇しがち。
http://www.thephantomoftheopera.com/

『ウィキッド』
開幕から15年が経ち、ようやくチケットに多少の余裕が。定期的に観たい傑作。
https://wickedthemusical.com/

■日本未上演の作品

『Ain’t Too Proud』
『ジャージー・ボーイズ』チームが描くテンプテーションズの軌跡。振付とキャストが最高。
https://www.ainttooproudmusical.com/

『ビートルジュース』
ティム・バートン監督映画の舞台化。原作を知らないとノリについていけない可能性高し。
https://beetlejuicebroadway.com/

『ブック・オブ・モルモン』
日本では永遠に上演されなさそうだが超絶面白い。モルモン教だけwikiで調べて観るべし。
https://bookofmormonbroadway.com/

『カム・フロム・アウェイ』
「911」の日、カナダの小さな町に起こった実話をシンプルだが力強い演出で描く感動作。
https://comefromaway.com/

『ディア・エヴァン・ハンセン』
深遠なテーマをスタイリッシュに描く、2017年のトニー賞受賞作。絶対日本でやると思う。
https://dearevanhansen.com/

『アナと雪の女王』
舞台ならではの表現が見当たらない残念作だが、生レリゴーは最高。来秋から日本でも上演!
https://frozenthemusical.com/

『Hadestown』
『グレコメ』の演出家が現代的に描くギリシャ神話。2019年のトニー賞で8冠を達成。
https://www.hadestown.com/

『ハミルトン』
開幕5年目にして未だ超入手困難なモンスター級ヒット作。文句なしに革新的。観るべし。
https://hamiltonmusical.com/

『ミーン・ガールズ』
同名映画の舞台化。なぜか人気。アメリカ的なノリについていける自信があればどうぞ。
https://meangirlsonbroadway.com/

『ウェイトレス』
同名映画の舞台化。話題性ある主役を次々投入し3年半踏ん張るも、ついに1月5日まで。
https://waitressthemusical.com


『トッツィー』
主演俳優を筆頭に大変チャーミングな舞台。誠に残念ながら1月5日まで。急げ!
https://tootsiemusical.com/

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プレビュー中は全員に配られたブロマイドは宝物

プレビュー中は全員に配られたブロマイドは宝物

 

【12月のミュージカルイベント】

年末のニューヨークには、タイムズスクエアのカウントダウンという泣く子も黙る世界的大イベントがあるため、何もしなくても観光客は集まる。それゆえかどうか、目ぼしい演劇系イベントもないわけだが、タイムズスクエアといえば劇場街の中心地でもある。観劇をするにも、この大イベントの喧騒に巻き込まれないことは不可能なので、今回は大晦日観劇の注意事項などを紹介しようーーと思ったのだが、今年はどの演目も休演のようだ。

そんなわけで、最終回がただの体験コラムになってしまうのだが、かつて大晦日の夜公演を観劇した時のこと。当日は朝から大量のパリピが場所取りにいそしんでいるため、大混雑な上に、場所取り目的以外の人間は立ち止まることすら許されない。そこにきて、チケットが通常回の倍ほどの値段だったことを鑑み、これはもしかしたら観劇後、カウントダウンを劇場前から見られる場所代込みなのか?と密かに期待したのだが、そんなことはなく終演したらすぐさま追い帰された。もちろん帰り道も、サクサク進むことも立ち止まることも許されず。お金と時間がかかるだけで、面白いことは特に起こらないので、大晦日にはたとえやっている演目があっても観劇はせず、むしろパリピの一員となることをオススメします。

2020年『アニー』は「成熟と新鮮」~ウォーバックス/藤本隆宏、ハニガン/マルシア、グレース/蒼乃夕妃、ルースター/栗山 航、リリー/河西智美


【THE MUSICAL LOVERS】Season 2 ミュージカル『アニー』
【第34回】2020年『アニー』は「成熟と新鮮」​

 

2020年の丸美屋食品ミュージカル『アニー』(主催・製作:日本テレビ放送網/協賛:丸美屋食品工業)の制作発表が2019年12月9日、都内で行われた。

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(後列左から)山田和也 河西智美 蒼乃夕妃 藤本隆宏 マルシア 栗山 航 篠﨑光正 (前列左から)荒井美虹 德山しずく

(後列左から)山田和也 河西智美 蒼乃夕妃 藤本隆宏 マルシア 栗山 航 篠﨑光正 (前列左から)荒井美虹 德山しずく

日本テレビ主催により1986年から日本での上演がスタートしたミュージカル『アニー』の舞台は、世界大恐慌直後の1933年、真冬のニューヨーク。誰もが希望を失う中、本当の両親が迎えに来る「明日」を信じて生きる孤児・アニー。そんなアニーをとりまく個性あふれる孤児たち、アニーによって変わってゆく大人たちが繰り広げるストーリー展開と、「Tomorrow」をはじめとする名曲の数々が、これまでのべ180万人もの観客に感動を与え続けてきた。

35年目となる2020年公演は、2020年4月25日(土)~5月11日(月)に新国立劇場中劇場で開催される(8月より大阪・群馬・名古屋・富山でも上演)。2017年・2018年・2019年に引き続き、演出は山田和也、音楽監督は佐橋俊彦、振付・ステージングは広崎うらんが担当する。

この日は大人キャストが発表になった。ウォーバックス役、ハニガン役、グレース役にはこれまで『アニー』に出演してきた実力派を据え、ルースター役、リリー役にはフレッシュな顔ぶれを起用した。

大富豪ウォーバックス役には藤本隆宏。2017年に丸美屋食品ミュージカル『アニー』が山田和也演出に刷新されてから4年連続、同役を演じる。

アニーたちにとっては恐怖の存在である、孤児院の院長ハニガン役にはマルシア。2017年に『アニー』が山田和也演出に刷新された際に同役を演じた。

大富豪ウォーバックスの秘書グレース役には蒼乃夕妃。2019年に同役を演じた。

ハニガンの弟ルースター役には栗山 航(わたる)。男性エンターテイメント集団「男劇団 青山表参道X」リーダーであり、2013年テレビドラマ『牙狼<GARO>~闇を照らす者~』主演・道外流牙役でデビュー、2016年『第4回ジャパンアクションアワード』にてベストアクション男優賞優秀賞を受賞したという華やかな経歴を持つ。

ルースターと組んでアニーたちをだますリリー役には河西智美。2006年AKB48の第2期生としてオーディションに合格、多くのシングルで選抜メンバーを務め、2013年に卒業後はライヴやミュージカルで活躍している。

会見では、はじめに日本テレビ放送網株式会社 取締役執行役員の廣瀬健一が登壇。「1986年4月にスタートさせたミュージカル『アニー』も2020年に35年目を迎えます。現在、1986年当時を知るものは、局にもほとんどいませんが、私は情報系の番組で、PRのドキュメンタリーを担当したので、初演を観ました。スライディングステージ(仕掛けによって水平に移動する舞台)や、舞台が回る、当時としては画期的な演出でした。2017年から山田和也さんの演出に変わられて、常に時代と周りの状況にあわせ、中身も演出も少しずつ進化しています。それが35年間支持を得る最大の秘訣かと存じます。慢心することなく、常にひとつひとつのステージが新たな出会いだと思い、2020年も進化させていきたい」と挨拶を述べた。

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廣瀬健一 日本テレビ放送網株式会社 取締役執行役員

廣瀬健一 日本テレビ放送網株式会社 取締役執行役員

次いで丸美屋食品工業株式会社 代表取締役社長の阿部豊太郎が登壇。「ミュージカル『アニー』は35年目となり、日本の定番ミュージカルになりました。2020年はオリンピック・イヤーで、夏は東京オリンピックがあります。『アニー』はGWから夏休みまで上演しますが、夏の公演はオリンピックをずらして調整しています。オリンピックの盛り上がりのあと夏の公演があります。ウォーバックス役の藤本隆宏さんはかつてオリンピックに2度出場、ハニガン役のマルシアさんもブラジル出身、と、国際的な活躍をされており、オリンピック・イヤーにふさわしい配役となりました。数千人から選ばれた才能あふれる優秀な子役さんたちと大人キャストが気持ちをひとつに、オリンピックに負けない感動をお届けできると思います。丸美屋食品も裏方として、すぐに食べられる即食型の製品を舞台裏・稽古場に差し入れし、胃袋をサポートさせていただきたい」と、企業協賛18年目ならではの思いを語った。

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阿部豊太郎 丸美屋食品工業株式会社 代表取締役社長

阿部豊太郎 丸美屋食品工業株式会社 代表取締役社長

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制作発表会場の一角には丸美屋食品コーナーも。

制作発表会場の一角には丸美屋食品コーナーも。

いよいよ出演者たちの紹介だ。まずは大人キャスト、ウォーバックス役の藤本隆宏、ハニガン役のマルシア、グレース役の蒼乃夕妃、ルースター役の栗山 航、リリー役の河西智美、2017年から『アニー』を演出する山田和也が登壇した。

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大富豪ウォーバックス役を演じる藤本隆宏は、2017年から4年連続『アニー』にキャスティングされた。「同じ役を演じる難しさ・楽しさ」を問われると、「毎年、子どもたちやお客様の反応が違うので、演じていてすごく新鮮です。惰性で芝居する状況になりえない。山田和也さんの演出も少しずつ変わっている」と答えた。

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大富豪ウォーバックス役の藤本隆宏

大富豪ウォーバックス役の藤本隆宏

孤児院の院長ハニガン役のマルシアは、「ハニガンはアニーたちにつらくあたるが、2017年とは違う感覚はあるか」と問われると、「2017年のことは覚えていない(笑)、ですが思い出すようなハニガンにはいたしません。2017年から年齢を重ねてきた、その分芝居も変わる、山田さんの演出も変わる。当時100ボルトだったら今回は1000ボルトにあげていきたい」と、10倍のパワーで周囲に「やるぞ!」とハッパをかけた。

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ハニガン役のマルシア

ハニガン役のマルシア

ウォーバックスの秘書グレース役を演じる蒼乃夕妃は、「来年への意気込み」を問われ、「2019年に初めて参加し、子どもたちのパワーに圧倒されました。毎回変わる子どもたちが新鮮でした。ロングランではあるが終わったらあっという間だったので、今回参加できて嬉しい。キャストが変わって新しい空気に馴染めるように頑張ります」と述べた。

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グレース役の蒼乃夕妃

グレース役の蒼乃夕妃

ハニガンの弟ルースター役の栗山 航は、『アニー』初参加となる。「皆が知っている『アニー』に参加できて光栄です。選ばれた意味があるよう、僕らしく演じたい。2020年はオリンピック・イヤー、それに負けないよう『アニー』も盛り上げたい」と、はつらつと語った。ことあるごとに「丸美屋さんの麻婆豆腐や、のりたまを食べれば笑顔」「丸美屋さんの差し入れが楽しみ」と「丸美屋好き」をアピールし、藤本には「大富豪にご飯をご馳走になりたい」と、ちゃっかりお茶目な一面ものぞかせ、すかさずマルシアが「私も!」と乗っかる。藤本に「ずる賢い(姉弟)ですねえ」と言わせ、早くもハニガン家としての本領を発揮させていた。

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ルースター役の栗山 航

ルースター役の栗山 航

ルースターの恋人であり、アニーたちをだますリリー役の河西智美も、『アニー』初参加だ。「リリー役への意気込み」を問われ、「(ウエンディ役で出演したミュージカル『ピーターパン』を上演していた梅田芸術劇場の)隣(シアター・ドラマシティ)で『アニー』を上演していて、楽しそうだと思っていました。AKB48同期の野呂佳代も、2016年にこの役をやっていました。私はこれまで少女の役が多く、大人の、しかも悪だくみをするという悪役は初挑戦。私自身、新しい一面に出会えそう。私らしいリリーを演じたい」と述べると、司会の佐藤真知子アナウンサーは「色っぽい雰囲気がピッタリですね」と、リリー姿の河西に引き込まれていた。

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リリー役の河西智美

リリー役の河西智美

そして『アニー』の主役である2人が呼ばれる瞬間が来た。<チーム・バケツ>アニー役の荒井美虹(あらい みく)、<チーム・モップ>アニー役の德山しずく(とくやま しずく)が元気よく登壇した。荒井は、『アニー』が大舞台初挑戦となる。德山は、主な出演作に、ミュージカル『冒険者たち~この海の彼方へ~』(2019年)月組 ジャンプ役、ミュージカル『ジョセフ』(2018年)STUDENT役がある。大舞台初挑戦となる荒井は、「アニーに決まって嬉しい。これから、いつ、どこで、誰に見られているかわからないので、挨拶や言葉遣いに気をつけます」とプロ意識を見せ、大人キャストたちも「見習わなきゃ」と顔を見合わせていた。

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チーム・バケツ アニー役の荒井美虹

チーム・バケツ アニー役の荒井美虹

今回、3度目の挑戦で合格した德山。過去2回は書類審査で落ち、初めての実技審査でアニー役を勝ち取った。「私はダンスが得意なので、ダンス審査で最後まで踊り切り、そこでアニー役への自信があがった。本番の公演でも、ダンスを観てほしい」とアピールした。

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チーム・モップ アニー役の德山しずく

チーム・モップ アニー役の德山しずく

「どんなアニーになりたいか」と問われると、荒井「観てくださった皆さんの心に残るアニーになりたい」、德山「演技でアニーの気持ちを伝えられたらな、と思います」と答える2人に、司会の佐藤アナは「2020年はオリンピック・イヤーで海外からもたくさんのお客さんが来るかも。ぜひ歌・演技・表現で伝えて」とエールをおくった。

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司会の日本テレビアナウンサー 佐藤真知子

司会の日本テレビアナウンサー 佐藤真知子

2017年から『アニー』を演出する山田和也は、「1年目、藤本さん、マルシアさんらとともに最初に作品を立ち上げるのは大変な仕事でした。うまくできたと思っても、後から振り返ると直したい、2年目にうまく直したと思ったら3年目にも直したくなる。今、整理され、見応えがあがっている。4年目は集大成として、熟されたクオリティーの『アニー』をお見せできます。さらに子どもたちは毎年入れ替わるので、新鮮にならざるを得ない。子どもたちからもらうエネルギー、無邪気な目、生意気な態度、それが『アニー』を新しくする。2020年の『アニー』は、成熟と新鮮!」と力強く語った。

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演出の山田和也

演出の山田和也

さらに今回は、日本テレビ版『アニー』の初代演出家である篠﨑光正も特別ゲストとして登壇した。1986年から2000年まで、日本テレビ主催のミュージカル『アニー』を15年にわたり演出してきた篠﨑は、日本で『アニー』が定着し、発展した基礎をつくった人物だ。1986年から2017年まで、『アニー』における犬のサンディ役はオールド・イングリッシュ・シープドッグだった。これは篠﨑がさまざまな犬種を見て、アニーの衣裳(赤と白と黒)に映え、サイズ感も大きく舞台で見栄えがする犬種を選んだという。本物の犬を出演させることも画期的だった。篠﨑が築き上げた「子役を公募してオーディションする」「メイキング特番を放送する」「本物の犬を出演させる」ことは全て、1986年から現在まで続く『アニー』の特色となった。

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日本テレビ『アニー』の初代演出家・篠﨑光正(右端)

日本テレビ『アニー』の初代演出家・篠﨑光正(右端)

その功績をたたえ、『アニー』が上演されたこれまでの『振り返りVTR』が上映された。「ハードノックライフ」でタオルを振って踊る子どもたちに、篠﨑が厳しい目を向ける。初代アニーの菅野志桜里と猪木寛子が映し出される。これまでアニー役を演じてきた66人の名前とともに、歴代アニーの声と映像で「Tomorrow」の曲が数珠つなぎで歌われていく。このVTRには、初演を観ている筆者も、感極まって涙が止まらなかった。

篠﨑からは、いかに日本での『アニー』が創られたか、という興味深い話がなされた。「当時の日本テレビ社長から『日本テレビの良心』を創ってくださいと頼まれ、1986年に上演するにあたり、1984年から2年間、社長も局長も参加されて準備した。その際、①(日テレで初めてのミュージカルなので)今までにない公演を創ろう。②(『アニー』は知られていなかったので)メイキングを創ろう。③(大人も子どもも)全員で合宿をしよう。……この3つの柱を軸とした」という。

「厳しい演出に、子どもたちは目をうるませていましたが?」という問いに、「映像だと怒鳴っている部分ばかりが使われているが、怒っているんじゃない。叱っている。自分の感情で怒るのはご法度だった、叱るのは子どもが成長するため。ただ、今だとパワハラなのだろうし、当時のことを言われると気が重い」。

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篠﨑が『アニー』演出を手掛けていた当時の映像も映し出された

篠﨑が『アニー』演出を手掛けていた当時の映像も映し出された

これを受けて、現在、演出を担当する山田は「これからは叱り飛ばそうと思います(笑)」と場を和ませつつ、「特別なものを創ろう、という気持ちや、日本テレビの良心、という言葉に頭が下がる。肝に銘じていきたい」と語る。ウォーバックス役の藤本も、「『アニー』がこの先も続くよう、精いっぱいやりたい」と、バトンを引き継ぐ決意を語った。

篠﨑は続ける。「『アニー』を創りはじめた37年前、モーレツに夜中まで仕事をすることは本当に幸せなのか疑問だった。それを仕事一筋のウォーバックスに重ねた。また、(丸大ハムの「わんぱくでもいい、たくましく育ってほしい」というCMのように)当時は、男の子に元気になってほしいというメッセージしかなく、女の子はおしとやかであれと言われることに疑問を持った。女の子にも元気になってほしかった。今は男女逆転し、女性が元気になったから『アニー』は任務を終えたかと思ったら、肝心のウォーバックスたちに元気がない。世界が分断され、エゴを出し、諍いがおこる社会において、成功しても不幸せなままのウォーバックスたちがいる。だからまだまだ、『アニー』を続けてほしい」。

キャスト・スタッフへは、「私たちの時代は7ヶ月半の稽古、プラス全員で合宿をして、心を創る仕事を大事にしてきた。今、演出を引き継ぐ山田さんによって、2020年も素晴らしい『アニー』に出会えると思う」と言葉をのこし、去っていった。

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日本テレビ版『アニー』初代演出家の篠﨑光正

日本テレビ版『アニー』初代演出家の篠﨑光正

記者からの質問で、お互いの印象について問われた荒井と德山。荒井は德山を「明るくて、すごく話しかけてくれる。まさにアニー」と述べ、德山は荒井を「美虹ちゃんは、いつも素直で、そこがアニー。前向きで、本当にアニーに合っている」と絶賛。お互いに褒め合い、照れ合う2人が微笑ましかった。愛らしいアニー2人だが、河西がリリー役のずる賢さについて、「自分には見当たらない要素なので、作っていかなきゃ」と述べると、楽しそうにからかう。「コラ!まだ知らないでしょ?」とかわいく反論する河西を見る2人は、まさにアニーそのものだった。「『アニー』を観てくれた人に笑顔になってほしい」と述べる荒井、「家族といるとほっとする」という德山に、ハニガン役のマルシアは「大人よりしっかりしてるわ」と感心しきりだった。

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(後列)河西、蒼乃、藤本、阿部社長、マルシア、栗山 (前列)荒井、德山

(後列)河西、蒼乃、藤本、阿部社長、マルシア、栗山 (前列)荒井、德山

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記者に混ざり出演者を撮影する演出の山田(毎年恒例)

記者に混ざり出演者を撮影する演出の山田(毎年恒例)

2020年新アニーズのお披露目は、「丸美屋食品ミュージカル『アニー』クリスマスコンサート2019」で行われる。2018年・2019年のアニーズを中心に構成され、『アニー』でおなじみの曲の独自のアレンジや、クリスマスソングなどが楽しめる。こちらはマルシア(2017年・2020年ハニガン役)、藤本隆宏(2017年・2018年・2019年・2020年ウォーバックス役)、木村花代(2015年・2016年グレース役)がスペシャルゲストとして出演することが発表されている。12月21日(土)12:00/15:00/18:00、22日(日)12:00/15:00、新国立劇場 中劇場にて上演。こちらのチケットは現在好評発売中だ。

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丸美屋食品ミュージカル『アニー』の本公演は2020年4月25日(土)~5月11日(月)、新国立劇場 中劇場で上演。8月より大阪・群馬・名古屋・富山にて公演を行う(日程は下記参照)。チケットは2019年12月14日(土)10時より発売(12/9現在イープラスにてプレオーダー受付中)、全席指定8,700円。ただし、4月28日(火)13時チーム・モップ公演 / 17時チーム・バケツ公演は「スマイルDAY」特別料金で全席指定6,700円。また、4月30日(木)13時チーム・モップ公演 / 17時チーム・バケツ公演は「わくわくDAY」として、来場者全員に『アニー特製サーモボトル(非売品)』がもれなくプレゼントされる(入場チケット持参で当日のみ引き換え・ものによっては数に限りがあり、先着順となる)。

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なお、ローズベルト大統領は、2018年にも同役を演じた伊藤俊彦、大人アンサンブルキャストは、鹿志村篤臣、後藤光葵、谷本充弘、長澤仙明、矢部貴将、山名孝幸、太田有美、木村つかさ、濵平奈津美、横岡沙季に決まった。

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取材・文=ヨコウチ会長
写真撮影=安藤光夫(SPICE編集部)


『アニー』キャスト表において、Roosevelt大統領は「ルーズベルト大統領」と表記されていますが、当連載では「ローズベルト大統領」と表記しています。)

次回に続く

ワッツ・オン・ブロードウェイ?~B’wayミュージカル非公式ガイド【2020年冬編】


ブロードウェイで上演中のミュージカルをとりあえず全部!紹介するこの連載。昨年は、初めてのNY観劇旅行を後押しするQ&Aを設けてみたり、その時々の演劇関連イベントをピックアップしたりもしながら月イチで更新していたが、今年から季刊ペースにリニューアル。とりあえず全部!な点はそのままに、一つひとつの作品をもうちょっと長めに紹介するコーナーも設けてみたい。ここはやはりロングラン順かなということで、今回は『オペラ座の怪人』(1988~)、『シカゴ』(1996~)、『ライオンキング』(1997~)にスポットを当てる。

■『オペラ座の怪人』

ガストン・ルルーの小説を原作にロンドンで舞台化され、ブロードウェイ史上最長のロングランを続けている、天才作曲家アンドリュー・ロイド=ウェバーの代表作。パリ・オペラ座の地下に潜む異才ファントム、歌姫の卵クリスティーヌ、その幼なじみのラウル子爵との三角関係を、流麗な音楽と魔法めいたセットによって運ぶ。正直言って、狂おしい恋物語に心行くまで浸って涙したいなら、ブロードウェイよりウエストエンドのほうがオススメ。だが、超絶歌ウマ俳優たちと生のオーケストラによって奏でられる楽曲の数々は文句なしに美しく、湖が出現したりシャンデリアが落ちてきたり火の手が上がったりする演出は何度でも新鮮な驚きを与えてくれるので、エンターテインメントとしては確実に楽しめるはずだ。

■『シカゴ』

天才ボブ・フォッシーの演出・振付によって初演(1975)されたもののそこまでの大ヒットには至らなかった作品を、ほぼコンサート形式でリバイバルしたことが功を奏し、アメリカ産ミュージカルとしては最長のロングラン記録を更新中。殺人を犯した二人の女、ロキシーとヴェルマが辣腕弁護士ビリーの力を借りて、スキャンダルを武器にスターダムにのし上がろうとする様を描く。この主要3役には世界各国の多ジャンルのスターが配されることが多く、そして演じ手によって作品の印象が大きく変わるため、観るタイミングによって当たりハズレがあるのは事実。下手すると来日キャストのほうがレベルが高かったりもするが、セクシーでスタイリッシュなアメリカらしさを感じるには最適の作品だ。

■『ライオンキング』

『美女と野獣』に続く、ディズニーのブロードウェイ進出第2弾にして、初のトニー賞受賞作。ストーリーはアニメ映画(1994)の通りだが、文楽の手法も取り入れてサバンナの動物たちを表現するという、動物=着ぐるみというミュージカル界の定説を覆した鬼才ジュリー・テイモアの演出がお見事。筆者などは客席通路から象が登場するだけで、人間の創造力に感動して泣けてしまうのだった。劇団四季による日本版もレベルは高いが、黒人俳優と黒人ミュージシャンたちが生み出す躍動感はやはり、日本版にはない魅力と言える。

【2019-2020シーズンの新作】

■1~3月に始まる作品

『Caroline, or Change3月13日プレビュー開始/4月7日開幕
2004年のトニー賞ノミネート作品の、2018年にロンドンで好評を得たリバイバル版。
https://www.roundabouttheatre.org/get-tickets/2019-2020-season/caroline-or-change/

『カンパニー』3月2日プレビュー開始/3月22日開幕
ソンドハイムの傑作コメディを『ウォーホース』の演出家でリバイバル。P・ルポンが出演。
https://companymusical.com/

『ダイアナ』3月2日プレビュー開始/3月31日開幕
ダイアナ元妃の人生を『メンフィス』の作家と『カム・フロム・アウェイ』の演出家で。
https://thedianamusical.com/

『Flying Over Sunset3月12日プレビュー開始/4月16日開幕
3人の著名人がLSD(当時は合法)を使用していた事実を元にJ・ラパインが創作する新作。
https://www.lct.org/shows/flying-over-sunset/

『Girl From the North Country2月7日プレビュー開始/3月5日開幕
ボブ・ディランの楽曲がちりばめられてはいるが、作りとしては完全にプレイ。要英語力。
https://northcountryonbroadway.com/

 

『ミセス・ダウト』3月9日プレビュー開始/4月5日開幕
同名映画を『サムシング・ロッテン!』の作家兄弟と売れっ子演出家J・ザックスが舞台化。
https://mrsdoubtfirebroadway.com/

『SIX: The Musical2月13日プレビュー開始/3月12日開幕
ロンドンで大ヒット中。ヘンリー8世の6人の妻がガールズパワーを炸裂させる痛快作!
https://sixonbroadway.com/


■既に上演中の作品

『David Byrne’s American Utopia』
ミュージカルではなく「一生に一度の」「シアトリカルなコンサート」。2月16日まで。
https://americanutopiabroadway.com/

『Freestyle Love Supreme』
『ハミルトン』のクリエイター陣がプロデュースする即興ミュージカル。1月12日まで。
https://freestylelovesupreme.com/

『Jagged Little Pill』
アラニス・モリセットの同名アルバムをミュージカル化。『ピピン』の演出家の最新作。
https://jaggedlittlepill.com/

『The Lightning Thief』
ファンタジー小説「パーシー・ジャクソン」シリーズが原作。3か月持たず、1月5日まで。
https://www.lightningthiefmusical.com/

『ムーラン・ルージュ!』
バズ・ラーマン監督映画をアレックス・ティンバースが演出する話題作。人気沸騰中!
https://moulinrougemusical.com/

『Tina:ザ・ティナ・ターナー・ミュージカル』
ロンドンでの好評を受けてBW入り。オリヴィエ賞ノミネートの主演女優が続投!
https://tinaonbroadway.com/

『ウエスト・サイド・ストーリー』プレビュー中/2月6日開幕
ヴァン・ホーヴェ(演出)とケースマイケル(振付)が名作を大胆にアレンジ。期待大!
https://westsidestorybway.com/

【ロングラン作品】

■日本で既に上演された/されている作品

『アラジン』
ディズニーアニメが舞台ならではの手法で表現された秀作。魔法の絨毯は本当に魔法。
https://www.aladdinthemusical.com/

『シカゴ』
オペラ座の怪人に次ぐロングラン記録を更新中の名物作。出来は割とキャスト次第。
https://chicagothemusical.com/

『ライオンキング』
開幕から20年以上経つというのに、未だ入場率がほぼ毎週100%を超える大ヒット作。
https://www.lionking.com/

『オクラホマ!』
1943年初演の名作を21世紀の解釈でリバイバル。2019年トニー賞。1月19日まで。
https://oklahomabroadway.com/

『オペラ座の怪人』
言わずと知れた世界的メガヒット作。圧倒的な知名度ゆえ、劇場では日本人に遭遇しがち。
http://www.thephantomoftheopera.com/

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『ウィキッド』
開幕から15年が経ち、ようやくチケットに多少の余裕が。定期的に観たい傑作。
https://wickedthemusical.com/

■日本未上演の作品

『Ain’t Too Proud』
『ジャージー・ボーイズ』チームが描くテンプテーションズの軌跡。振付とキャストが最高。
https://www.ainttooproudmusical.com/

『ビートルジュース』
ティム・バートン監督映画の舞台化。映画を見ておかないと厳しいかも?6月6日まで。
https://beetlejuicebroadway.com/

『ブック・オブ・モルモン』
日本では永遠に上演されなさそうだが超絶面白い。モルモン教だけwikiで調べて観るべし。
https://bookofmormonbroadway.com/

『カム・フロム・アウェイ』
「911」の日、カナダの小さな町に起こった実話をシンプルだが力強い演出で描く感動作。
https://comefromaway.com/

『ディア・エヴァン・ハンセン』
深遠なテーマをスタイリッシュに描く、2017年のトニー賞受賞作。絶対日本でやると思う。
https://dearevanhansen.com/

『アナと雪の女王』
舞台ならではの表現が見当たらない残念作だが、生レリゴーは最高。今秋から日本で上演!
https://frozenthemusical.com/

『Hadestown』
『グレコメ』の演出家が現代的に描くギリシャ神話。2019年のトニー賞で8冠を達成。
https://www.hadestown.com/

『ハミルトン』
開幕5年目にして未だ超入手困難なモンスター級ヒット作。文句なしに革新的。観るべし。
https://hamiltonmusical.com/

『ミーン・ガールズ』
同名映画の舞台化。なぜか人気。アメリカ的なノリについていける自信があればどうぞ。
https://meangirlsonbroadway.com/

『トッツィー』
主演俳優を筆頭に大変チャーミングな舞台。残念ながら1月5日まで。ラストチャンス!
https://tootsiemusical.com/

『ウェイトレス』
同名映画の舞台化。話題性ある主役を次々投入し3年半踏ん張るも、ついに1月5日まで。
https://waitressthemusical.com

映画『キャッツ』の日本語吹き替え版<第三弾>キャストとして山寺宏一、宮野真守、沢城みゆき、山路和弘、宝田明らが参加

 

2020年1月24日(金)から日本でも公開される映画『キャッツ』。その日本語吹き替え版を担当するキャストの<第三弾>として、山寺宏一浦嶋りんこRIRI宮野真守沢城みゆき山路和弘、そして宝田明が参加することが、このほど発表された。これにより、既に発表されていた、葵わかな、山崎育三郎、高橋あず美、秋山竜次(ロバート)、森崎ウィン、大貫勇輔、藤原聡(Official髭男dism)、そして大竹しのぶと併せ、主要な日本語吹き替えキャストが一通り揃った。

『キャッツ』は元々、作曲家アンドリュー・ロイド=ウェバーがイギリスを代表する詩人T・S・エリオットの詩集をもとにミュージカル化した舞台作品だ。1981年のロンドン初演以来、全世界累計観客動員数8100万人、劇団四季の日本公演も通算1万回に及ぶ。そんな大ヒットミュージカルを『レ・ミゼラブル』のトム・フーパー監督が全く新たな実写映画に作り変えたのが、今回の映画版『キャッツ』である。

製作総指揮にはスティーヴン・スピルバーグやロイド=ウェバーら世界最高峰の顔たちが名を連ねる。出演者も豪華だ。主人公のヴィクトリア役に、英国ロイヤルバレエ団のプリンシパルで本作が映画初出演となるフランチェスカ・ヘイワードを抜擢したのをはじめ、ジェニファー・ハドソン、ジェームズ・コーデン、ジュディ・デンチ、イドリス・エルバ、イアン・マッケラン、そしてテイラー・スウィフトといった、映画、音楽、ダンスなど、多彩なジャンルから選び抜かれた珠玉のキャスト陣が個性豊かな猫たちを演じる。

【動画】映画『キャッツ』日本版予告


言語吹き替えのカスタマイズが許されたのは世界で二カ国のみ。そのひとつである日本語吹替え版には、観客と同じ目線で『キャッツ』の不思議な世界を冒険する主人公ヴィクトリア役に女優の葵わかな、猫たちのリーダーであるマンカストラップ役に俳優の山崎育三郎。名曲「メモリー」で魂の歌声を響かせるグリザベラ役に歌手の高橋あず美、ふとっちょで紳士的なバストファージョーンズ役にお笑い芸人の秋山竜次(ロバート)、マジックが得意で気弱なミストフェリーズ役に俳優・歌手の森崎ウィン、働きもので鉄道をこよなく愛するスキンブルシャンクス役に俳優・ダンサーの大貫勇輔、美声とダンスですべての猫を虜にする自由奔放な猫ラム・タム・タガー役に藤原聡(Official髭男dism)。そして、猫たちの偉大な長老であるオールドデュトロノミー役に、女優の大竹しのぶが既に発表されていた。

これに加えて、このほど新たに発表された日本語吹替え版キャストは、日本を代表するレジェンド声優から実力派新人まで多彩な面々が顔を勢揃い。『アラジン』のジーニー役や『SING/シング』のマイク役でもその美声を披露している声優の山寺宏一は、神出鬼没で恐ろしい力を持つお尋ね者の猫・マキャヴィティ役を。舞台「レ・ミゼラブル」やミュージカル「メリー・ポピンズ」などで活躍する舞台女優の浦嶋りんこは、昼間はぐうたらで夜は元気なおばさん猫・ジェニエニドッツ役を。国際的に活躍する実力派若手シンガーのRIRIは、マキャヴィティと行動を共にし、世界的アーティストであるテイラー・スウィフト演じる妖艶な雌猫・ボンバルリーナ役を。演技&歌唱力ともに実力を兼ね備える声優の宮野真守と沢城みゆきは、イタズラ好きかつ盗みのプロで悪名高きコソ泥カップル猫・マンゴジェリー&ランペルティーザ役を。ハリウッドスターの吹替えを数多く担当する声優の山路和弘は船が住処の荒くれ猫・グロールタイガー役をそれぞれ担当。そして、映画「ゴジラ」シリーズから長きにわたり活躍するレジェンド俳優の宝田明は、かつては劇場の大スターで今は過去の栄光を懐かしむ老猫であり、オリジナル版では名優イアン・マッケランが演じているガス役を務める。

また、日本語吹替え版音楽プロデュースは、数々のアーティストの楽曲アレンジ、プロデュースを手がけてきた蔦谷好位置が担当する。

なお、このほど発表された『キャッツ』日本語吹替え版の新キャストたちからコメントが届いたので、以下に紹介する。

■山寺宏一/マキャヴィティ
神出鬼没で恐ろしい力を持つお尋ね者の猫(オリジナルキャスト:イドリス・エルバ)

【世界で二カ国のみが許された吹替え版ですが、演じてみていかがでしたか?】
参加出来て嬉しかったです!ミュージカルで観たマキャヴィティは、あまり姿を現さず歌ってもいなかったと記憶してるんですが、映画版ではしっかり出て来て歌も(少しですが)歌っているので、やりがいがありました! 不気味で怖いだけじゃないんです。

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マキャヴィティ(声・山寺宏一) (C)2019 Universal Pictures. All Rights Reserved.

マキャヴィティ(声・山寺宏一) (C)2019 Universal Pictures. All Rights Reserved.

■宝田明/ガス
かつては劇場の大スター。過去の栄光を懐かしむ老猫(オリジナルキャスト:イアン・マッケラン)

【世界で二カ国のみが許された吹替え版ですが、演じてみていかがでしたか?】
此の世に存する生命体は、全て喜怒哀楽を有する。猫とて同じ事。彼が吐き出す言葉に少しく味付けをして、素直に挑戦した。

【ご自身が演じるキャラクターとの共通点は何かありますか?】
老猫エンジン全開すれど、悲しいかな体力が、深い溜息が、人生を感じさせる。

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ガス(声・宝田明) (C)2019 Universal Pictures. All Rights Reserved.

ガス(声・宝田明) (C)2019 Universal Pictures. All Rights Reserved.

■浦嶋りんこ/ジェニエニドッツ
昼間はぐうたら。夜は元気なおばさん猫(オリジナルキャスト:レベル・ウィルソン)

【世界で二カ国のみが許された吹替え版ですが、演じてみていかがでしたか?】
世界で二カ国のみ!に、吹替え収録後あらためて震えがきてます!最高に興奮して吹替えに挑みました!

【ご自身が演じるキャラクターとの共通点は何かありますか?】
私も夜行性で、夜の活動が活発。○キブリは食べないですが、ネズミは子供の頃ポケットに入ってました(笑)。

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ジェニエニドッツ(声・浦嶋りんこ) (C)2019 Universal Pictures. All Rights Reserved.

ジェニエニドッツ(声・浦嶋りんこ) (C)2019 Universal Pictures. All Rights Reserved.

■RIRI/ボンバルリーナ
マキャヴィティと行動を共にする妖艶な雌猫(オリジナルキャスト:テイラー・スウィフト)

【世界で二カ国のみが許された吹替え版ですが、演じてみていかがでしたか?】
ミュージカルも、映画の吹替えも初めての経験でしたので、とてもエキサイトしました! ボンバルリーナは、妖艶な猫のキャラクターなので表現が難しかったですが、すべて本当に楽しくて、演じることの楽しさも知れた、とても素敵な機会でした!

【ご自身が演じるキャラクターとの共通点は何かありますか?】
ボンバルリーナのキャラクターは、私にはない側面をたくさん持ってるので、その分、初めての表現が多くて、演じていてとても楽しかったです! 日本語版のボンバルリーナ、ぜひ楽しみにしていてくださいね!

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ボンバルリーナ(声・RIRI) (C)2019 Universal Pictures. All Rights Reserved.

ボンバルリーナ(声・RIRI) (C)2019 Universal Pictures. All Rights Reserved.

■宮野真守/マンゴジェリー
悪名高きコソ泥カップル猫のオス(オリジナルキャスト:ダニー・コリンズ)

【世界で二カ国のみが許された吹替え版ですが、演じてみていかがでしたか?】 
「キャッツ」を観劇して大変感動し、衝撃を受けたので、このような形で携わることができて、本当に幸せです!

【ご自身が演じるキャラクターとの共通点は何かありますか?】
おどけ役でお調子者なところと、小心者なところでしょうか……(笑)。

■沢城みゆき/ランペルティーザ
悪名高きコソ泥カップル猫のメス(オリジナルキャスト:ニーヴ・モーガン)

【世界で二カ国のみが許された吹替え版ですが、演じてみていかがでしたか?】
楽曲の中でキャラクターを作っていく作業は初めてで、1テイク毎に細かな演出をいただき、少しづつ形にしていきました。……我慢はしない気質のランペル!解放されるようで心地良かったです。

【ご自身が演じるキャラクターとの共通点は何かありますか?】
……ぱっと、思いついたのは、相方のことが大好きなところ(笑)でしょうか。宮野さんとこうした間柄は新鮮で嬉しかったです。

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左端ランペルティーザ(声・沢城みゆき)、右端マンゴジェリー(声・宮野真守) (C)2019 Universal Pictures. All Rights Reserved.

左端ランペルティーザ(声・沢城みゆき)、右端マンゴジェリー(声・宮野真守) (C)2019 Universal Pictures. All Rights Reserved.

■山路和弘/グロールタイガー
「テムズの悪魔」と恐れられた船が住処の荒くれ猫(オリジナルキャスト:レイ・ウィンストン)

【世界で二カ国のみが許された吹替え版ですが、演じてみていかがでしたか?】
歌だけ吹替るなんて、生涯ないと思ってた。選んでいただけて光栄でした。そして機会をくれたキャッツに感謝。

【ご自身が演じるキャラクターとの共通点は何かありますか?】
ただの酔っ払いのオヤジみたいになったかなぁ、、だとしたら、それが共通点?

 

【ストーリー】
扉の向こうには、 なにが待っているの―?
満月が輝く夜。若く臆病な白猫ヴィクトリアが迷い込んだのはロンドンの片隅のゴミ捨て場。
そこで出会ったのは個性豊かな 〝ジェリクルキャッツ〞 たち。ぐうたらな猫、 ワイルドな猫、お金持ちでグルメな猫、
勇敢な兄貴肌の猫、不思議な力を持つ長老猫・・・様々な出会いの中でヴィクトリアも自分らしい生き方を見つけていく。
そして今宵は新しい人生を生きることを許される、たった一匹の猫が選ばれる特別な夜。
一生に一度、 一夜だけの特別な舞踏会の幕が開く。
 

本年度アカデミー賞にノミネート! いま世界で最も旬なアーティスト、シンシア・エリヴォが間もなく来日~マシュー・モリソン、三浦春馬をゲストに迎えミュージカル・コンサート開催

 

1月13日に発表された第92回アカデミー賞ノミネーションにおいて、映画『ハリエット」で主演女優賞候補に選ばれ(同映画内で歌われた「Stand Up」も歌曲賞候補に)、明くる14日朝には日テレ「スッキリ!」でマシュー・モリソンとのデュエットを生披露し、お茶の間を感動の渦に包んだシンシア・エリヴォ。そんな話題の彼女が、『シンシア・エリヴォ ミュージカルコンサート featuring マシュー・モリソン&三浦春馬』と題された公演を、2020年1月16日(木)・17日(金)に東京国際フォーラムホールAで開催する。。奇跡の3人が東京に集結する、最初で最後の「今後二度と見られないかもしれない」スペシャルコンサートだという。今回、公演を目前にして、SPICEでは舞台ライターの兵藤あおみさんに、シンシア・エリヴォについてコラム執筆をお願いした。ぜひご一読を。(SPICE編集部)



ここ数年、海外のミュージカルシーンで活躍するトップスターたちが日本でソロコンサートを開催する機会が増え、とても喜ばしい。と同時に、その流れが今後ますます活発化してほしいと願ってやまない。耳/目の肥えた演劇ファンや関係者をうならせる抜群の歌声はもちろん、舞台で演じた役の名ナンバーから「あ、こんな曲も歌えるんだ!」という嬉しい驚きを与えてくれるお楽しみ楽曲までニクい選曲眼で魅せるセットリスト、さらに曲と曲の合間のMCで垣間見せる当人の素の部分など、耳や目、そして心が満たされる極上の時間を通し、いつしかその人の才能やパーソナリティにすっかり魅了されてしまう。そんなコンサートに今年もいくつ出会えるだろう?と期待で胸を膨らませてしまう。今年は“2020年”という節目の年。その新たな“Decade(10年)”の先陣を切るのにふさわしい人物が年明け早々、日本でソロコンサートを行うという。そう、あのシンシア・エリヴォがやって来るのだ!(2020年1月16日・17日、東京国際フォーラムホールA)

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忘れもしない2016年の4月某日。NY・ブロードウェイのバーナード・B・ジェイコブス劇場で観たミュージカル『カラーパープル』。奴隷のような生活を強いられる薄幸の女性セリーが一人の人として自立していくさまを描いた同作で、セリーを演じていたのがエリヴォだ。その体当たり演技とパワフルかつ情感たっぷりの歌声に何度心を揺さぶられ、涙腺を崩壊させられたか……。特に、さまざまな困難を経験したヒロインが最後に「あるがままの自分が愛しい」「私は美しい」と歌う、同作の最大のナンバー「I'm Here」。約152cmという小柄な身体からは想像できないほどの圧倒的な存在感で、劇空間を掌握していた。彼女が歌い上げた直後、余韻を味わうかのような一瞬の静寂をおき、客席がどっと沸きに沸いたのを今でも鮮明に覚えている。あの場で得た衝撃と感動は、20年にわたる筆者のブロードウェイ観劇人生においてもかなりスペシャルなものだったといえる。

ウエストエンド公演でのエリヴォに関する好評を数々目にし、かなりハードルを上げて劇場に向かったのだが、彼女はそんなハードルを軽々と飛び越えていった。とにかく圧巻のパフォーマンスだった。ちなみにこのセリー役で鮮烈なブロードウェイ・デビューを飾ったエリヴォは、同年のトニー賞でジェシー・ミューラー(『ウェイトレス』)やローラ・ベナンティ(『シー・ラヴズ・ミー』)らを抑え、見事最優秀主演女優賞を獲得。2017年には『カラーパープル』のキャスト盤CDでグラミー賞を受賞している。

『カラーパープル』以後、ミュージカルの出演作が途絶えているエリヴォだが、2017年にはラミン・カリムルー、シエラ・ボーゲス、城田優といった人気俳優たちと共演したスペシャルショー『4Stars2017』で初来日。前述の「I’m Here」などで持ち前の歌声を披露しつつ、MC部分では気さくでちゃめっ気ある表情も見せ、多くの観客を魅了した。また今年11月に全米公開された伝記映画「ハリエット」(日本では3月に公開予定)で激動の人生を歩んだ奴隷解放運動家ハリエット・タブマンを熱演し、第92回アカデミー賞主演女優賞にノミネート。同作では主題歌「Stand Up」(アカデミー賞歌曲賞にノミネート)のボーカルを務めるなど、大きな注目が集まっている。

そんな中で行われるソロコンサートである。現時点で発表されているセットリストには、「I'm Here」や「Stand Up」といった彼女の持ち歌はもちろん、「Don't Cry for Me Argentina」(『エビータ』より)や「Don't Rain On My Parade」(『ファニー・ガール』より)といった往年のミュージカルソングから「クイーン・オブ・ソウル」の呼び名を持つアレサ・フランクリンの代表曲「(You Make Me Feel Like) A Natural Woman」まで、緩急織り交ぜた彩り豊かな選曲だ。シンガー、シンシア・エリヴォの真髄を存分に堪能できることだろう。

さらに今回、スペシャルゲストとしてマシュー・モリソンと三浦春馬が共演! モリソンはブレイクのきっかけとなったブロードウェイ・ミュージカル『ヘアスプレー』からのノリノリのナンバー「You Can't Stop the Beat」やシュー先生という当たり役を得たTVドラマ「glee/グリー」の人気曲「Don't Stop Believin'」を。対する三浦も出演作『キンキーブーツ』から感動のナンバー「Not My Father's Son」の英語歌唱や3月に出演を控える『ホイッスル・ダウン・ザ・ウィンド ~汚れなき瞳~』からの楽曲を披露するという。それぞれのソロはもちろん、デュエットや3人そろってのパフォーマンスなど1曲1曲、余すところなく楽しませてくれそうだ。

新年早々、豪華3人の競演を目の当たりにできるとは……幸先良すぎでは? 今から開幕が待ちきれない。

【動画】『シンシア・エリヴォ ミュージカルコンサート featuring マシュー・モリソン&三浦春馬』15秒スポット


文=兵藤あおみ

【SPICE独占】映画『キャッツ』 でロビー・フェアチャイルドが演じる“マンカストラップ”のキャラクター映像を解禁


全世界累計観客動員数8100万人、日本公演通算1万回を記録するなど、1981年のロンドン初演以来、今なお世界中で愛され続けるミュージカルの金字塔「キャッツ」。ノーベル文学賞の受賞経験をもつイギリスの詩人、T・S・エリオットの詩集を元に、「オペラ座の怪人」「レ・ミゼラブル」等の大ヒットミュージカルを手がけた制作陣の奇跡の作品が、遂に実写映画化を果たした。そんな映画『キャッツ』が2020年1月24日(金)より日本で公開となる。

製作総指揮に名を連ねるのは、映画『レ・ミゼラブル』のトム・フーパー監督をはじめ、ミュージカル界の巨匠アンドリュー・ロイド=ウェバーら。そして主人公の子猫ヴィクトリア役を務めるのは、英国ロイヤル・バレエ団でプリンシパルを務め、本作が映画初出演となるフランチェスカ・ヘイワードだ。さらに、ジェニファー・ハドソンやテイラー・スウィフト、ジュディ・デンチ、イアン・マッケランをはじめ、映画、音楽、ダンスなど、多彩なジャンルから選び抜かれた珠玉のキャスト陣が参加し、個性豊かな猫たちを演じることで注目を集めている。

そんな中、主人公ヴィクトリアを導く、勇敢で兄貴肌の猫マンカストラップのキャラクター映像が到着した。

【動画】映画『キャッツ』 <マンカストラップ>キャラクター映像 © 2019 Universal Pictures. All Rights Reserved.


ロンドンの街に迷い込んだ子猫のヴィクトリアに手を差し伸べ、新しい世界へと導いていく、猫界のリーダー・マンカストラップ。長老猫オールドデュトロノミーの後継者的な存在としても注目され、沢山の猫たちから慕われている。一生に一度、一夜だけ開かれるジェリクルキャッツたちの特別な舞踏会では優れた司会役としても活躍する。また、新入りのヴィクトリアが舞踏会を初めて経験していく姿に特別な資質と可能性を見出し、猫界のリーダーとしてヴィクトリアを危険から守ろうとする勇敢な一面もみせる。

そんなマンカストラップを演じたのは、ロビー・フェアチャイルドだ。ニューヨーク・シティ・バレエの元プリンシパルで、ブロードウェイ・ミュージカル「パリのアメリカ人」ではトニー賞にもノミネートされた経歴のある男性バレエダンサーである。自身の役を「マンカストラップの役目は、新入りの猫を招き入れ、導くこと。語り手とも言えるね」と笑顔で説明するロビー。続けて「マンカストラップはとても思いやりがある。みんなを輝かせるんだ。猫たちは彼を尊敬しているよ」とその魅力を明かすように、映像内ではマンカストラップの紹介を受け、次々に渾身のパフォーマンスを披露していく楽し気なジャリクルキャッツたちの姿が映し出される。猫たちの一番の良き理解者であるマンカストラップが、どのような語り口で観客を不思議な猫たちの世界に誘ってくれるのか……その特別な一夜を劇場の大きなスクリーンでぜひご堪能いただきたい。

【動画】『キャッツ』日本版予告 © 2019 Universal Pictures. All Rights Reserved.

【映画公開記念ビッグ対談】安倍寧&堀内元~語り尽くせぬ『キャッツ』の魅力

 
 

1981年のロンドン初演以来、世界中で愛され続けてきたミュージカルの金字塔『キャッツ』が遂に実写映画化され、2020年1月24日(金)から日本でも公開される。舞台の全世界累計観客動員数は8100万人、劇団四季による日本公演も通算1万回に及ぶ本作品は、名匠アンドリュー・ロイド=ウェバーがイギリスを代表する詩人T・S・エリオットの詩集をもとにミュージカルに仕上げたものだ。そんな『キャッツ』を、映画『レ・ミゼラブル』のトム・フーパー監督が全く新たなミュージカル映画に作り変えた。

製作総指揮にはロイド=ウェバーら世界最高峰の顔たちが名を連ねる。出演者も壮観だ。主人公のヴィクトリア役に、英国ロイヤルバレエ団のプリンシパルで本作が映画初出演となるフランチェスカ・ヘイワードを抜擢したのをはじめ、ジェニファー・ハドソン、ジェームズ・コーデン、ジュディ・デンチ、イドリス・エルバ、イアン・マッケラン、そしてテイラー・スウィフトといった、あまりにも豪華なキャストたちを配した。

その映画公開を記念し、このほど安倍寧そして堀内元というビッグなふたりの対談が実現した。安倍氏は作曲者のロイド=ウェバーと長年の付き合いを重ねてきた音楽評論家、一方の堀内氏は元ニューヨーク・シティ・バレエ団のダンサーながら米英日三都市で『キャッツ』に出演した世界唯一のダンサーなのだ。『キャッツ』に非常に縁の深い御二方ならではの貴重なエピソードが満載となった本記事、映画を観る前に是非ご一読あれ。(SPICE編集部)
 
 

【動画】『キャッツ』日本版予告


ーー安倍寧さんは1981年の『キャッツ』のロンドン初演を観られ、日本での劇団四季での上演にも尽力されました。そして堀内元さんは、ブロードウェイ、ロンドン、東京で『キャッツ』のミストフェリーズ役を演じました。お二人の『キャッツ』との出会いから聞かせてください。

安倍 私がニューヨークで初演を観た『ジーザス・クライスト・スーパースター』、その後の『エビータ』と、立て続けに傑作を送り出したアンドリュー・ロイド=ウェバーは、まだ20代でした。彼とは当時からの付き合いですが、そんなロイド=ウェバーが『キャッツ』というとんでもない企画と格闘していると聞いたのが最初ですね。

ーー「とんでもない」とは、どういうことですか?

安倍 まだディズニーは舞台ミュージカルに進出していない時代ですから、「人間が出てこない作品」はありえませんでした。しかも原作はT.S.エリオットで文学性が高い。ミュージカルに重要な、確たるストーリーも存在しないらしい。どんな作品なのかも想像できなかったのですが、1981年、ロンドンで観たところ、猫の社会を描きながら、「これは人間社会だ!」と感じられたんです。多種多様な人間が闘いながら、おたがいに協力し合って生きる世界だと感動しました。

堀内 僕はブロードウェイのプレビューを観るチャンスがありました。

安倍 ブロードウェイの初演ということは、1982年だね。

堀内 僕も人間社会の模写が底辺にある作品だと感じましたね。強烈な印象が残りました。

ーー堀内さんはプレビューを観たということは、出演の話があったからですか?

堀内 当時、僕はニューヨーク・シティ・バレエに所属しており、その芸術監督のピーター・マーティンスが、『キャッツ』のプロデューサーから僕の出演依頼を受けたのです。でもピーターは「そんなもの、出ちゃダメだ」とあっさり断ってました(笑)。

安倍 オリジナルの振付のジリアン・リンが、きみにミストフェリーズを踊らせたかったんじゃないかな?

堀内 キャスティング・ディレクターが僕の舞台を観て声をかけてくれたようです。ロンドンの初演でもウェイン・スリープ(※1)という名ダンサーが演じた役なので、ニューヨークでもバレエダンサーを探していたみたいです。

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舞台『CATS』に基づく映像DVD (C) 1998 The Really Useful Group, Ltd. All Rights Reserved.

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ーーその時点で断ったミストフェリーズ役を結局、演じた経緯を教えてください。

堀内 アンドリュー・ロイド=ウェバーが『キャッツ』に続いて『オペラ座の怪人』を成功させ、その後、『ソング・アンド・ダンス』をブロードウェイで上演することになりました。ピーター・マーティンスが振付を担当することになり、『キャッツ』の話は断ると言った彼が、今度は「自分が振り付けるから」と僕に出演するように言ってきたんです。

安倍 ブロードウェイのオリジナルキャストというのは、本当にすごいこと。批評の対象になるので、途中からのキャストとは、まったく価値が違う。日本人のオリジナルキャストとなると、最近では『王様と私』(リバイバル版)の渡辺謙さんくらいでしょう。

堀内 その『ソング・アンド・ダンス』で僕はアンドリューや(製作の)キャメロン・マッキントッシュと親しくなれたのです。そうしているうちに『キャッツ』が9周年を迎えてキャスト一新することになり、ピーターもようやく「出なさい」と許可を出してくれました。

安倍 私は堀内くんのミストフェリーズを、ニューヨーク、ロンドン、東京と、すべて観てるんだよ。

堀内 そうですよね。ちょうど安倍先生がいらっしゃった時に、ふだん外部の人には稽古を見せないジリアン・リンも見学させてくれたんですよね?

安倍 そうそう。ジリアンとは親しかったからね。堀内くんのミストフェリーズ役は最高だった。クラシックバレエの難しい技が入っているからね。

堀内 アラセゴンターン(※2)の32回転がありました。バレエでは女性の32回転はありますが、男性はめったにないんです。それを週8回の公演で毎回やるわけで、しかも舞台が傾斜している。本当に大変でした。

ーー『キャッツ』は1983年に日本でも公演が始まり、ロングランを記録します。当時、ここまで人気を得ると感じていましたか?

安倍 ロンドンの公演がすでにショウビジネスの枠を超えて社会現象になっていたので、世界的ブームになると信じていましたね。「ボーイ・ミーツ・ガール」という、それまでのミュージカルの原則にのっとらず、舞台装置、衣装、振付もすべてが革新的。何より音楽のすばらしさが際立っていましたから。

堀内 メロディのひとつひとつが新鮮で覚えやすいし、歌いやすいんです。僕も音楽に魅了されました。当時はロンドン版のCDを買って毎日、聴いていましたから。

安倍 アンドリュー・ロイド=ウェバーが、キャラクターそれぞれに合った曲を作ったところが成功の要因でしょう。

堀内 猫の表現が国によって違ったり、そういう面白さもありますよね。日本の場合は、招き猫の手の動きがあったりします。

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(C)2019 Universal Pictures. All Rights Reserved.

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ーー今回の映画『キャッツ』を観た感想を教えてください。

堀内 舞台版をそのまま映画化すると思っていたら、演出も振付もまったく新しくなっていました。リメイクというより、新しい『キャッツ』に生まれ変わったという印象です。

安倍 トム・フーパー監督の「舞台とは違うものをやろう」という意思が鮮明でしたね。舞台版以上に脚本の苦心が伝わってきました。小さな役だったヴィクトリアをクローズアップし、これまで縁のなかったジェリクルキャッツ(※3)という猫の集団に紛れ込ませる。その設定がまったく新しい。

ーー観客もヴィクトリアと同じ目線でジェリクルキャッツの世界に入っていく、ある意味でわかりやすい設定になりました。

安倍 この設定は、今の時代を反映していると思います。固定観念の強い社会や集団に、「他者」が入り込み、その異質な存在を、どう受け入れるのかが試される。まさに現代的なテーマですよ。ヴィクトリアは、ジェリクルキャッツの仲間には入れないと思っている。でも長老のオールドデュトロノミーは当たり前のように受け入れようとする。現在の各国のリーダーに見習ってほしい態度だと、涙ぐみそうになりました。

堀内 ちなみに舞台版では描き切れていない「"ジェリクルキャッツ"とは何なのか?」という問いの答えを、映画の最後の場面でオールドデュトロノミーが明かしてくれていると思います。もともと「jellicle」は原作者T・S・エリオットの造語で。彼の幼いめいっ子が猫を見るたびに「dear little cat(親愛なるちっちゃな猫)」と言っていたのが、「d」を「ジ」と発音する英語のなまりで「jellicle cat」と聞こえたことから来ているんです。オールドデュトロノミーがヴィクトリアを集団に招き入れる際に言う、「Now, You're a Jellicle Cat(これであなたもジェリクルキャットよ)」というセリフには、「我々はただのかわいい猫。そんなにえらいもんじゃない。誰だってこの一族になれるんだ」というメッセージが込められているんです。以前からずっと、舞台上で「jellicle」についてちゃんと説明すればいいのにって思っていたから、映画館では思わず、ニコニコ笑っちゃいました。

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オールドデュトロノミー(ジュディ・デンチ) (C)2019 Universal Pictures. All Rights Reserved.

オールドデュトロノミー(ジュディ・デンチ) (C)2019 Universal Pictures. All Rights Reserved.

ーー観客もまたヴィクトリア同様に、共同体に受け入れられた気分を味わえるわけですね。

堀内 舞台の『キャッツ』のオープニングは猫たちが客席から登場して、休憩時間もお客さんと遊んだりします。つまり人間に向かって、猫が物語を伝えるわけです。でも映画の場合は、客席に出てくることはできません。だからヴィクトリアがお客さんの役割となって、みんなが彼女に向かってパフォーマンスする。これは最近のダンスの潮流とも似ていて、かつては客席に向かって表現したものを、ダンサー同士で行い、それをお客さんが横から見る……という傾向です。ダンサーや振付家の目線から、この映画は現代的だと感じました。

安倍 作品の中で、登場人物が他の人物に語り掛けるというスタイルだね。それを観客が眺めて感動するわけだ。

堀内 そうなんです。映画では、自分たちに対する「叫び」が強調されていました。

安倍 ヴィクトリア役のフランチェスカ・ヘイワードには、クレジットで「introducing」とつきますよね。これは「今作が初出演」という意味だけど、この映画『キャッツ』の場合は、猫の世界を「紹介する=introducing」という役割も込められているんじゃないかな。

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ヴィクトリア(フランチェスカ・ヘイワード) (C)2019 Universal Pictures. All Rights Reserved.

ヴィクトリア(フランチェスカ・ヘイワード) (C)2019 Universal Pictures. All Rights Reserved.

ーーその他に、キャラクターで印象に残った部分はありますか?

安倍 中心的存在のグリザベラは、いわば「のけもの」の存在。そんな彼女が外から来たヴィクトリアと心を通わせ、アウトサイダー同士の交流を長老が見守る。そこに私は感動しました。

ーーちょうど彼女らのシーンに流れるのが、アンドリュー・ロイド=ウェバーとテイラー・スウィフトが映画のために新たに制作した「Beautiful Ghosts」です

安倍 この新曲は、私からしたら「三重丸」の仕上がりですよ。ヴィクトリアにもナンバーが必要ということで登場する曲ですが、アンドリューはメロディのストックをいっぱい持ってる人なので、どのように作られたのか興味深いですね。

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アンドリュー・ロイド=ウェバーとテイラー・スウィフト

アンドリュー・ロイド=ウェバーとテイラー・スウィフト

堀内 「メモリー」も最初は『キャッツ』のために書かれたわけじゃないのに、うまく当てはめましたからね。

安倍 そう。何に使うか決めず、いいメロディがあると書き留めておく人。レストランなんかで紙ナプキンに書いてしまうこともあると言ってた(笑)。いずれにしても今回の「Beautiful Ghosts」は、じつにアンドリュー・ロイド=ウェバーらしい曲です。聴きやすいのと同時に、流行に迎合せず、作曲家としての誇りを感じさせる美しいメロディ。ひとつの曲として屹立してるんです。舞台版の「メモリー」と同じように、この曲の魅力で観客が増えてほしい。

ーー堀内さんが演じたミストフェリーズの役どころも、映画でだいぶ変更されました。

堀内 たしかにそうですね。ただ、ミストフェリーズって舞台版でも変化しているんです。僕が出たロンドン版では、ジェニエニドッツのシーンで先頭でタップで踊っています。ブロードウェイの初演では、マンゴジェリー&ランペルティーザを歌で紹介します。そうなると、歌えて、タップも踏めて、バレエも踊れる人が必要になってしまうので、だんだん役割が特化したみたい(笑)。だから映画で変わったのも、わからなくないです。

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(上)ミストフェリーズ(ローリー・デヴィッドソン) (C)2019 Universal Pictures. All Rights Reserved.

(上)ミストフェリーズ(ローリー・デヴィッドソン) (C)2019 Universal Pictures. All Rights Reserved.

ーー映画版のダンスは、いかがでしたか?

堀内 もともと『キャッツ』にはコンテンポラリー的な動きやタップも含まれていました。今回、ヒップホップを加えたり、スキンブルシャンクスにタップを踊らせたりして、さすがにアンディ・ブランケンビューラーは今をときめく振付家だと実感しました。

安倍 群舞の見せ方がうまかったよね。映画の場合は、カメラが引きでとらえますから、俯瞰でのアンサンブルをじっくり観てほしいと感じましたよ。

ーー堀内さんが所属していたニューヨーク・シティ・バレエ出身のロビー・フェアチャイルド(マンカストラップ役)や、ロイヤルバレエのフランチェスカ・ヘイワード(ヴィクトリア役)、スティーヴン・マックレー(スキンブルシャンクス役)など、バレエダンサーのキャストも大活躍しています。

堀内 よくやってくれていると思いましたね。タップも踏んで、歌も歌う。後輩の人たちがやっているのを観るのはうれしいものです。

安倍 ジリアン・リンにしても、ブランケンビューラーにしても、振付の基本はバレエだからね。

堀内 ロビーとフランチェスカの2人が最初から最後までバレエの動きをしており、そこに映画版に受け継がれた何かを発見し、感動しました。

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(右)マンカストラップ(ロビー・フェアチャイルド) (C)2019 Universal Pictures. All Rights Reserved.

(右)マンカストラップ(ロビー・フェアチャイルド) (C)2019 Universal Pictures. All Rights Reserved.

安倍 キャストには、ウエストエンドでシェイクスピアの作品で鍛えぬかれた名優も入っていれば、映画が初めての新人もいる。異なるバックグラウンドを背負った人たちが、ひとつの作品に集まる面白さを強く感じましたよ。グリザベラ役のジェニファー・ハドソンも、「メモリー」を見事に歌っていた。

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ガス(イアン・マッケラン) (C)2019 Universal Pictures. All Rights Reserved.

ガス(イアン・マッケラン) (C)2019 Universal Pictures. All Rights Reserved.

ーー映画版では、そのグリザベラが流す涙も印象的です。

堀内 舞台でも、グリザベラ役で涙を流しながら歌った人もけっこういます。僕も共演したローリー・ビーチマンは、ガンを宣告された状態で舞台に立ち、涙を流しながら「メモリー」を歌っていました。「もう一回、人生をやり直せたら。もう一回、命を与えられたい」という気持ちが本当に伝わってきて、いま思い出しても心が揺さぶられます。結局、グリザベラを演じ終えた3ヶ月後に亡くなってしまいましたが……。

安倍 歌い手が。曲と完全に合体しないと歌いきれない。そこに「メモリー」の魅力があるんじゃないかな。

ーー映像はかなり独創的ですが、どんな感想をもちましたか?

堀内 バレエ的な動きがよくわかる映像になっていたと思います。尻尾を自由に動かせるのがいいですよね。舞台では、自分の手で動かすしかないですから。

安倍 私は違和感はなかった。人間の部分と猫の部分のバランスは難しいでしょう? 役者の顔が完全に残り、毛で覆われた肉体とのバランスに、作り手の苦心が感じられました。リアルすぎる猫が歌ったり、踊ったりしたらおかしいですからね。

ーー背景となるロンドンの風景について、何か印象に残った部分はありますか?

安倍 僕の知っているレストランの名前が出てきましたよ。ちょうど思い出そうとしてた店なので、映画『キャッツ』を観て助かった(笑)。Dronesという有名人の子ども時代の写真が飾ってある店です。冒頭のネオンサインに、「Rising Sun」という実在のパブの名前が出てきますが、T.S.エリオットが残した詩の下書きの中にも「グリザベラがRising Sunの近くをさまよっていた」という部分があるんです。うまく使っていると感心しましたね。

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グリザベラ(ジェニファー・ハドソン) (C)2019 Universal Pictures. All Rights Reserved.

グリザベラ(ジェニファー・ハドソン) (C)2019 Universal Pictures. All Rights Reserved.

ーーでは最後に「SPICE」の読者に向けて、映画『キャッツ』はもちろん、ミュージカルを映画で観る喜びを、お二人の言葉でお願いします。

堀内 映画は何回も繰り返し観られるので、『キャッツ』も後世に残す意味で価値があると信じます。とくに子どもたちに、大きな影響を与えるんじゃないでしょうか。この映画を観てダンスを始める人や、ミュージカルスターを目指す人が現れてくれればうれしいですね。

安倍 舞台版と映画版は別物であり、同じものでもあります。その2つの視点で観てほしいですね。初めて映画で『キャッツ』にふれた人は、舞台版に興味をもってくれるでしょう。そして舞台版に詳しい人は、映画を観て、違う表現として発見があるはずです。ぜひ異なる感動を味わってください。そして日本語吹替え版も楽しんでほしいですね。製作側が「声を聴いて選んだ」とのことで、的確なキャストが実現しましたから。

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ボンバルリーナ(テイラー・スウィフト) (C)2019 Universal Pictures. All Rights Reserved.

ボンバルリーナ(テイラー・スウィフト) (C)2019 Universal Pictures. All Rights Reserved.

※1:映画『リトル・ダンサー』(ミュージカル『ビリー・エリオット』)の主人公のモデルになったといわれる、英国の有名バレエダンサー。

※2:片脚を真横に上げたままの回転。16回転はクラシックの演目にもあるが、32回転は珍しい。

※3:人間に飼い慣らされることを拒否し、自らの個性と行動力で生きる猫の集団。「jellicle」は、jejewelry(宝石)+miracle(奇跡)という説、jelly+cle(ゼリーのように柔らかで小さいもの)という説、Dear littleを気取って発音するとこの音に聞こえるからという説(本インタビューの中で堀内元氏が説明している)などがある。

取材・文=斉藤博昭


【Profile】安倍寧(あべ やすし)
音楽評論家。1956年慶應義塾大学文学部仏文科卒業。同大在学中よりフリーランス・ライターのはしりとして、主として内外ポピュラー音楽、ショウ、レヴュウについて記事・批評の執筆活動をおこなってきた。一方、日本ゼネラルアーツ株式会社取締役として越路吹雪ロング・リサイタル、越路主演のミュージカルほかの立案・上演に、更には四季株式会社(劇団四季)取締役として企画・渉外に携わった。一方、1960~1990年年代には、日本レコード大賞審査委員・実行委員、東京音楽祭国内・国際両部門審査委員の立ち場から、音楽業界ウォッチャーの役割を果たす。また、2007年から2年間上演された『BLUEMAN GROUP IN TOKYO』ではエグゼクティブ・プロデューサーを務めた。著書多数。

【Profile】堀内元(ほりうち げん)
1964年東京都生まれ。バレエディレクター、ミュージカル俳優、振付家。米国セントルイス・バレエ団芸術監督(2000年~)。1982年ニューヨーク・シティ・バレエ団に東洋人として初めて入団を許可される。さらに東洋人初のプリンシパルに昇格、1999年まで同バレエ団で活躍した。ブロードウェイミュージカルにも出演、『Cats』では、ブロードウェイ、ウエストエンド、東京と3都市に出演。1998年の長野オリンピックでは、開会式の振付も手掛けた。今夏も自身のプロデュース公演が日本で上演される

【Profile】斉藤博昭(さいとうひろあき)
映画ライター/ジャーナリスト。映画サイト、雑誌、劇場パンフレットなどさまざまな媒体に映画レビュー、インタビュー記事を寄稿。得意ジャンルはハリウッドおよびイギリス映画全般、ミュージカル。Yahoo!ニュース(https://news.yahoo.co.jp/byline/saitohiroaki/)でコラムを随時更新中。

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(左端)ランペルティーザ(ニーヴ・モーガン)、(右端)マンゴジェリー(ダニー・コリンズ) (C)2019 Universal Pictures. All Rights Reserved.

(左端)ランペルティーザ(ニーヴ・モーガン)、(右端)マンゴジェリー(ダニー・コリンズ) (C)2019 Universal Pictures. All Rights Reserved.

【動画あり】映画『キャッツ』がいよいよ1月24日から日本で公開!トム・フーパー監督、フランチェスカ・ヘイワードらが来日したジャパンプレミアレポート


全世界累計観客動員数8100万人、日本公演通算1万回を記録するなど、1981年のロンドン初演以来、今なお世界中で愛され続けるミュージカルの金字塔『キャッツ』が、『レ・ミゼラブル』や『リリーのすべて』で知られるトム・フーパー監督のもと映画化され、2020年1月24日(金)より日本で公開される。

公開を直前に控えた22日(水)、六本木ヒルズアリーナで、ジャパンプレミアが行われた。トム・フーパー監督、本国版で主人公のヴィクトリアを演じたフランチェスカ・ヘイワード、プロデューサーのデブラ・ヘイワード、日本語版吹き替えキャストの葵わかな(ヴィクトリア役)、山崎育三郎(マンカストラップ役)、高橋あず美(グリザベラ役)、ロバートの秋山竜次(バストファージョーンズ役)、大貫勇輔(スキンブルシャンクス役)、大竹しのぶ(オールドデュトロノミー役)、そして日本語吹き替え版の音楽プロデューサーを務めた蔦谷好位置が参加した。このジャパンプレミアの様子を、動画や写真とともにレポートする。

【動画】映画『キャッツ』ジャパンプレミア レッドカーペット取材


 

■フーパー監督「吹き替え版は素晴らしいキャストによる力作」

フランチェスカ・ヘイワードや日本語吹替えキャスト、そして監督、プロデューサーたちが続々と乗用車で到着し、レッドカーペットを歩く。駆けつけたファンたちにサインをしたり、一緒に写真を撮ったりしつつ、報道各社のサウンドバイツ(カーペット上のVIPが、横一列に並んだ報道のムービーカメラの前で各社ごとの質問に答えていく取材)や、フォトコールに約1時間近く応じた。SPICEもサウンドバイツに参加した(上の動画をご覧ください)。

その後、30分ほどのトークセッションのイベントに参加した。

−−まず最初に一言お願いします。

フランチェスカ・ヘイワード みなさん今日は集まってくださってありがとうございます。何度も来日していますが、いつも日本の皆様に温かく迎えていただいてます。今夜も皆様にお目にかかれてとても嬉しく思います。『CATS』という素晴らしい映画の一員として、皆様とお目にかかれたこと、大変光栄に思っております。楽しんでください。

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フランチェスカ・ヘイワード

フランチェスカ・ヘイワード

デブラ・ヘイワード(プロデューサー) 皆様ありがとうございます。本日は皆様の前に立つことができましてワクワクしております。そして心から日本の皆様、ファンの皆様に心から感謝しております、ありがとうございます。

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デブラ・ヘイワード

デブラ・ヘイワード

トム・フーパー(監督) 「皆様、こんばんは。トム・フーパーです。吹き替え版は素晴らしいキャストによる力作です。ありがとうございます」(日本語で挨拶)。東京にこうして来られたことをとても嬉しく思っております。特に『CATS』のプレミアということで、とても嬉しいです。今週はとても素晴らしい1週間で、月曜日は天皇・皇后両陛下、愛子さまとともに『CATS』の特別試写をフランチェスカとデブラとともに参加することができて、大変な栄誉でした。

今、このイベントでファンの皆様にお会いできたこともとても嬉しかったです。この作品だけではなく、私の監督作品である『リリーのすべて』や『レ・ミゼラブル』のファンがこれだけいるのだということでとても嬉しくも思っております。この『CATS』という作品を映画化するのは自分の夢でした。初めて出会ったのは8歳の時。本当にすぐに惚れ込んだ作品で、大きなスクリーンで見ていただきたいと思って作った作品ですので、ぜひ映画館で見ていただきたいです。また、先ほど申し上げた通り、日本の素晴らしいスターが集結して、素晴らしい吹替え版ができました。そちらのバージョンも、僕は今晩見るのですが、楽しみにしているところです。

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トム・フーパー監督(左)

トム・フーパー監督(左)

葵わかな 今回の『CATS』という作品は、日本でミュージカルとして、本当に根強い人気のある作品だと思います。まず、自分が一番驚いたのは、『CATS』が映画化するんだということ。最初にオーディションのお話をいただいた時は、本当に想像がつかなかったんですけど、オーディションを受けて、ヴィクトリアの役を演じることができてとても嬉しかったです。ハイレベルのキャストさんたちが集まって、ダンスや歌を歌われている映画なので、声だけでも参加できて嬉しかったですし、日本のお客様に見ていただくとまた伝わることがあるんじゃないかと、とても楽しみにしています。

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葵わかな(ヴィクトリア役)

葵わかな(ヴィクトリア役)

山崎育三郎 日本で愛されている、ミュージカル『CATS』。僕が大好きなトム・フーパー監督が作られた、この映画に携われることに本当に興奮しています。素晴らし世界観、美しい映画になっておりますので、早く皆様に見ていただきたいです。収録も初めての経験だらけで、頭にバンドを巻いて、そこにマイクを仕込んで、実際に体を動かしながら、(オリジナル版に出演している)役者さんと同じ気持ちで、僕たちも吹替えをさせていただきました。僕はミュージカルの世界で育ってきたので、自分ができるすべてをこの映画でぶつけました。ぜひぜひ楽しみにしていください。

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山崎育三郎(マンカストラップ役)

山崎育三郎(マンカストラップ役)

高橋あず美 初めましての方がたくさんが多いと思うのですが、私は映画の中でグリザベラ役を吹替え版で歌わせていただいています。私自身、ミュージカルもミュージカル映画も大好きで、『CATS』という素晴らしいミュージカルが映画化されるということで、携われることをすごく光栄に思います。(オリジナル版では)ジェニファー・ハドソンさんがグリザベラ役を演じているのですが、18歳の頃から大尊敬しているシンガーなので、その方の吹替えをできることをすごく幸せに思います。早く皆さんに見てもらえると、嬉しいです。よろしくお願いします。

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高橋あず美(グリザベラ役)

高橋あず美(グリザベラ役)

秋山竜次 私はロバートというグループの秋山と申します。本当に嬉しいですね、こんな世界的に有名なミュージカルの映画で、声をやらせていただけるなんてね。まず、猫たちに見てほしいなというなというのが率直な感想で、今日は悔しいことに人間しかいなくて、もっと猫たちに……(プロデューサーのために訳している通訳に向かって)訳さなくて大丈夫ですよ、ほんのジョークなので(笑)。とにかく本当に嬉しいですね。難しかったですけど、一生懸命頑張って吹替えましたので、ぜひ皆様ご覧ください。よろしくお願いします。……いいんだけどなぁ、訳さなくて(笑)。

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ロバートの秋山竜次(バストファージョーンズ役)

ロバートの秋山竜次(バストファージョーンズ役)

大貫勇輔 この場に立てたこと、この作品に関われたことが光栄です。世界中に愛される『CATS』というミュージカルが実写化されて、そして、スキンブルシャンクスの曲は本当にリズミカルで耳残りする曲で、それをやらせていただけて本当に嬉しく思っています。24日から始まるので、たくさんの方々に見ていただけると嬉しいと思います。よろしくお願いします。

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大貫勇輔(スキンブルシャンクス役)

大貫勇輔(スキンブルシャンクス役)

大竹しのぶ 素晴らしいオリジナル版を見て、吹替えをするにあたって、舞台と同じように、1ヶ月ぐらい前からみんなが一緒に歌うシーンをみんなと一緒に吹替えたらどんなにいいだろうと思うぐらい、そのワンカットワンカットに尊敬の念を抱きました。(オリジナル版のオールドデュトロノミー役)ジュディ・デンチの一声一声、一息一息が私の体を通して、日本語として皆様に届けられるように頑張りました。オリジナルは素晴らしいので、日本語吹替え版と両方絶対見てほしい。...あ、でも今日は日本語版の宣伝なので、日本語版を見てからオリジナル版を見て、もう1回日本語版を見てください(笑)。ありがとうございます。

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大竹しのぶ(オールドデュトロノミー役)

大竹しのぶ(オールドデュトロノミー役)

蔦谷好位置 僕も監督と同じように、幼少期に初めて見たミュージカルが『CATS』でした。偉大で世界的な監督のトム・フーパー監督の作品で、こんな素晴らしいキャストの方々と一緒に、仕事ができるというのは非常に光栄なことでした。実際の制作ではキャストの皆さんが、全身全霊で歌って演じてくれています。僕も最後まで、実は今年に入ってからも録音編集の作業を一生懸命やっていました。監督、そして、フランチェスカさん、デブラさんにも誇れるものができると思っていますので、皆様ぜひ、楽しみに日本語吹替え版を見てください。よろしくお願いします。

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蔦谷好位置(吹き替え版音楽プロデューサー)

蔦谷好位置(吹き替え版音楽プロデューサー)

−−今日は日本語吹替え版のキャストと、英国のキャストや制作陣の方が会われたわけですが、その感想をお願いします。

葵わかな 私と秋山さんは去年、ニューヨークで行われたワールドプレミアにお邪魔して、そこで監督やフランチェスカさんたちと初めてお会いして。その時は、私たちがどちらかと言えばお客さんという立場で行かせていただいたんですけど、今回は日本でお三方をお迎えする形でいらしていただけたのは、すごく嬉しいですし、それに今日はこんなにたくさん来てくださったお客様がいらっしゃるので、みなさんに誇らしい気持ちです。

フランチェスカ・ヘイワード 可愛らしく美しいわかなさんとまたお会いできて、とても嬉しいです。今日は日本語吹替え版のお祝いの日なので、それを一緒にみなさんとお祝いできて本当に嬉しく思っております。

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ヴィクトリア役を演じたデブラ・ヘイワード(左)と、日本語版吹き替えを担当した葵わかな

ヴィクトリア役を演じたデブラ・ヘイワード(左)と、日本語版吹き替えを担当した葵わかな

山崎育三郎 トム・フーパー監督の作品が大好きで、特に『レ・ミゼラブル』は、僕もマリウスという役でずっと日本のミュージカルの舞台に立たせていただいたので……。映画化されて見に行った時に、こんなミュージカルの表現があるんだと感動して、何度も何度も見た映画でした。今日は直接お会いできて、その想いも先ほど伝えさせていただき、写真もどさくさに紛れて撮らせていただき(笑)、今日はもう感無量です。ありがとうございます。

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山崎育三郎

山崎育三郎

秋山竜次 そうですね、監督は身長も高し、大きい方ですよね。監督の中で、僕は色んな監督を見てきたけれど、一番優しい目をしていますね。こんなに優しい目の監督はいないから、だからこんな素敵な作品ができたのじゃないかなと思っていた。プロデューサーさんもゴージャスだしね。Yeah, ゴージャス! ダイナマイトな感じでね…。秋山と申します、Let’s Dance!(笑)

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秋山竜次(左)とデブラ・ヘイワード

秋山竜次(左)とデブラ・ヘイワード

−−日本語版の収録を終えてみてどんな感触をお持ちになっているのか、教えてください。

高橋あず美 私は映画の中で「メモリー」という、ものすごく大切になってくる曲を歌わせてもらっています。(オリジナル版の)ジェニファー・ハドソンさんを大好きなんですけど、初めて彼女の「メモリー」を聞いた時に、これはどうしようとまず思いました。本当に素晴らしい歌を歌われる方で、ソウルもパワーもあり、本当にいろんな感情にされる歌を歌ってくださる。そのパワーや感情、ソウルの部分を失わないように、日本語に乗せて歌う部分に苦労したんですけど、絶妙なバランスでソウルフルに日本語で届けられるものに特化して、歌いました。それはとても貴重な経験でした。私は普段、ミュージシャンとして活動していて、吹替え自体が初めてになります。自分の声で吹替えをするにあたり、新たに自分の発見もあったし、こうやって演技をしながら感情に乗せて歌を歌うことにすごく幸せを感じました。

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高橋あず美

高橋あず美

大貫勇輔 (大貫が演じる)スキンブルシャンクスは鉄道が好きな猫。タップを踏みながら踊るシーンやバレエっぽい動きもあったりして。踊りながら歌うシーンだったんですよね。実際マイクを頭につける、新しいタイプの録音だったんですけど、実際に一緒に動きながら収録をしました。動くと、息遣いも一緒に入るので、そこは蔦谷さんから色々教えてもらいながら、録音できて、本当に楽しかったなと。それと同時に、撮り終わった後に寂しさもありました。

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大貫勇輔

大貫勇輔

大竹しのぶ 尊敬するジュディ・デンチ(オリジナル版のオールドデュトロノミー役)。歳が私よりも20歳ぐらい違うので、一言一言に深さを出すのに苦労しましたが、彼女の演技を見ていて、お会いしたことはないんですけれども、近づけたような気がして。やはり終わるのが寂しかったです。

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大竹しのぶ

大竹しのぶ

−−世界の中でも、ドイツと日本でしか吹替え版の制作が許されていません。その音楽プロデュースを担当されて、収録を終えた今、どんな気持ちですか。

蔦谷好位置 非常な光栄なことだと思うと同時に、プレッシャーがすごかったです。作品をラフな段階で見させていただいた時に、果たしてこれ日本語で可能なんだろうかと、不安もあったんですけど、素晴らしいキャストの皆様のおかげで、本国版と遜色ないどころか、本当に誇れるものができたと思います。録音と編集をやっている間に、監督の細部に至るこだわりがものすごく伝わってきました。日本語版にした時に、そこを絶対損なわないように、いかに正確に監督のメッセージを伝えらえるか。最後まで僕らもスタッフの皆さんと一緒にやったので、ぜひ注目してみていただけたらなと思います。

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蔦谷好位置

蔦谷好位置

■フランチェスカ「普遍的で誰の心にも響くテーマが詰まっている」

−−愛する『CATS』を実写映画化して、いよいよ日本公開されます。いま、どんな気持ちですか。

トム・フーパー 本当に嬉しい気持ちでいっぱいです。というのは、日本は自分にとっての2つ目のホームあるいは、スピリチュアルなホーム。そんな風に感じている場所だからです。日本の方々ならば、素晴らしいそれぞれの芸術性、そして細心の心遣いを持って日本語のバージョンを作ってくださるという風に確信しておりましたが、今、蔦谷プロデューサーが自分の作品について仰った言葉、とても感動しました。「ありがとうございます」(日本語で)。

また、マリウスを7年間演じた山崎さんが隣に立っているわけですが、とても居心地がいいです。同じようにミュージカルに情熱を持っている方々の中に居られるから。ただですね、今日驚いたのは、まさかバストファージョーンズ(役の秋山竜次)にちょっと色目を使われるとは思わなかったので、想定外でした(笑)。

それはともかく。この『CATS』というミュージカルは、8歳のときに両親に連れて行ってもらい、本当に一目惚れした作品です。映画化しようと思ったのは、『レ・ミゼラブル』の映画版を作り終えている時のことでした。そういう8歳の自分の体験があったので、8歳の自分のために作ったところがある作品です。ですから、5歳から85歳まで、本当にファミリーで、年齢にかかわらず、見ていただきたい、楽しんでいただきたいと思って作った作品です。

日本語の吹替えバージョンを作りたいと思ったのは、先ほど申し上げたように、日本の方々ならば細やかに気遣って作ってくださることが分かっていたし、日本のファンの方々に最大限に響く『CATS』をお届けしたいと思ったからなんですね。なかなか舞台版を見るのはアクセスが難しいという方もいらっしゃると思うのですが、吹替え版・字幕版両方あるので、大きなスクリーンで、素晴らしいミュージカルを日本の多くの方にお届けできればと思っています。

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トム・フーパー監督

トム・フーパー監督

−−フランチェスカさん。ご自身の主演作が日本で公開されますが、どんなところに注目してほしいですか。

フランチェスカ・ヘイワード 一見すると、楽しいエンターテイメントのミュージカル作品なのですが、実はたくさんの深いテーマやメッセージが込められている素晴らしいストーリーだと思うんです。愛、許し、寛容の心、第二のチャンス、人生の再生といった、普遍的で、誰の心にも響くテーマがたくさん詰まっている点にも注目していただきたいと思います。

私自身も子どもの頃に初めてこのミュージカルを見て、すごく刺激を受けて、ヴィクトリアを惚れ込んで。今こうしてその役を演じるという数奇な運命があります。私が子どもの頃に見てインスピレーションを受けたのと同じように、この映画版を見て、次世代の子どもたちが共感を覚えたり、インスピレーションを得たりして、大きな夢を見るようになってくれたら嬉しいなと思います。

もちろんこの映画を映画版として、全く新しい形で『CATS』として、描き直してくれたトム・フーパー監督に本当に心からお礼を言いたいと思います。

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フランチェスカ・ヘイワード

フランチェスカ・ヘイワード

−−最後に日本の皆様へメッセージをお願いします!

フランチェスカ・ヘイワード 今日はたくさんの方々にお越しいただきましてありがとうございます。日本語吹替え版の素晴らしいキャストの方々と一緒に、日本語吹替え版の完成をお祝いできたことを嬉しく思っています。ぜひ皆様、映画をご覧になってください。

デブラ・ヘイワード 皆様本日はお越しいただきましてありがとうございます。何十年もというか、長い期間をかけてやっとこの映画を作ることができましたし、本当に素晴らしく、私たちが誇りに思っている作品ができたと思っております。さらに、このステージ上に立たれている、この素晴らしいキャストの方々、素晴らしい作品になりましたので、ぜひ皆さん、楽しんでいただけたらと思います。

トム・フーパー 寒い中をお集まりいただいたファンの方々、マスコミの方々にお礼を申し上げたいと思います。ファンの方々に会えてとても嬉しかったのですが、自分の他の監督作品のファンで見てくださった方とも触れて嬉しかったです。

日本の素晴らしいキャストの方々がどんな風に命を日本版に吹き込んだのか。これから見ることができるわけですが、大変楽しみにしています。作品は愛情で作った作品です。そして僕にとって『CATS』という映画は、優しい心がもたらすことができる変化、コミュニティというものの大切さを、ユーモアであったり、ダンスであったり、素晴らしいパフォーマンスを通して伝えている作品です。日本の方々にこの作品をお届けできることがとても誇らしく思います。本当にありがとうございました。

葵わかな 寒い中、本当にありがとうございました。いよいよ1月24日から吹替え版が公開となります。なぜこの作品がこんなに長い間、世代も変わり続けているのに、いろんな方に愛され続けているのか。映画に関わらせていただくにあたって考えたのですが、いつどんな年齢の人でも性別でも、どんな方が見ても受け取るものがそれぞれにあって、そこに正解もなくて、だからこそ間違いもなくて、多くの人が受け入れてくれるような作品にもなっているからなんじゃないかなと感じています。本当に今の映像技術があるからこそ映画化できた作品だと思うので、ぜひ、今この時代に生きている私たちだからこそ、この映画版をぜひ見ていただきたいなと思います。それぞれに感じることが何かあったら嬉しいです。ありがとうございました。

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葵わかな

葵わかな

山崎育三郎 寒い中ありがとうございました。本当にこの作品に携われたことが幸せです。言いたいことがたくさんあるのですが、皆様ぜひこのトム・フーパー監督の魔法にかかってください。こんな世界は他で見たことはありません。ぜひ劇場で体感してみてください。どうぞよろしくお願いします。

高橋あず美 映画でしか知ることのできない『CATS』の魅力や新たな発見がたっぷり詰まった映画になっていると思います。音楽もダンスも歌も素晴らしくて、心にグサグサくる瞬間がたくさんあったので、皆様もそれぞれの感情を楽しんでもらえたら嬉しいなと思います。ぜひ何度も足を運んでいただけたらと思います。今日はありがとうございました。

秋山竜次 今日はありがとうございます。見たら絶対に、足でステップを踏んで、ノって来ちゃうというか。顔もこうなると思うんです(口を開けて圧倒されている表情)。本当にお集まりいただいた皆様、マスコミの皆さん、この広場を貸していただいた業者、絨毯をひいていただいた絨毯業者、そして監督らを運んできた航空関係の方々、照明、それから神様、全ての方に感謝します。そして、全世界の猫にありがとう!

大貫勇輔 寒い中本当にありがとうございました。本当に素晴らしい作品なのは皆様お分かりかと思うんですけど、僕が特に言いたいのはダンス。素晴らしい一流のストリートダンサー、ジャズダンサー、コンテンポラリーダンサー、バレエダンサー。素晴らしいダンスのパフォーマンス、素晴らしい音楽とストーリーとメッセージを24日から楽しんでもらえたら嬉しく思います。今日はありがとうございました。

大竹しのぶ 寒い中ありがとうございました。この映画は優しさと愛が溢れているんですけど、今日、監督にお会いして、監督の話を聞いて、その理由がとてもよくわかりました。劇場を出るときに、あ、人生って楽しい。頑張れると絶対思える映画なので、日本語で見てください。そして、オリジナルで、どうぞ。

蔦谷好位置 本当に誇れる作品になったと思います。いろんな感情が湧くと思います。喜びだったり感動だったり、たくさんの感動が湧くと思うので、ぜひ劇場で体感して、その感情を多くの人に伝えて欲しいです。そして、何度でも劇場で見て、また見るたびに新たな発見があると思うので、何度でも劇場に足を運んでください。よろしくお願いします。

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映画『キャッツ』ジャパンプレミアに参加した、トム・フーパー監督、主演のフランチェスカ・ヘイワード、プロデューサーのデブラ・ヘイワード、そして、日本語版吹き替えキャストら

映画『キャッツ』ジャパンプレミアに参加した、トム・フーパー監督、主演のフランチェスカ・ヘイワード、プロデューサーのデブラ・ヘイワード、そして、日本語版吹き替えキャストら

なお、この日、やはり『キャッツ』の日本語吹替えキャストとして参加している朴璐美(カッサンドラ役)と山路和弘(グロールタイガー役)が結婚を発表した。

取材・文・撮影=五月女菜穂
動画撮影・編集=登坂義之・安藤光夫(SPICE)

【動画】映画『キャッツ』ジャパンプレミア ステージイベント

 

「HADESTOWN」サントラ盤が第62回グラミー賞ミュージカル・アルバム賞

 

2020年1月26日(日本時間1月27日)第62回グラミー賞授賞式において、2020年の最優秀劇場ミュージカル・アルバムに「HADESTOWN(ヘイデズタウン)」が選ばれた。

アルバム「HADESTOWN」は、ミュージカル『HADESTOWN』のオリジナルサウンドトラック盤だ。同ミュージカルは2019年6月におこなわれた第73回トニー賞においても、最優秀ミュージカル作品賞をはじめ最多8部門を制覇している。

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『HADESTOWN』  ©Getty Images

『HADESTOWN』  ©Getty Images

今回のアルバムはブロードウェイ・オリジナル・キャストによる録音で、主な参加者はリーブ・カーニー、アンドレ・ド・シールズ、アンバー・グレイ、エヴァ・ノブルザダ、パトリック・ペイジら。作曲・作詞はアナイス・ミッチェル。

同部門における他のノミネートアルバムは、「AIN'T TOO PROUD: THE LIFE AND TIMES OF THE TEMPTATIONS(エイント・トゥー・プラウド:テンプテションズの人生と時間」「MOULIN ROUGE! THE MUSICAL(ムーラン・ルージュ)」「THE MUSIC OF HARRY POTTER AND THE CURSED CHILD - IN FOUR CONTEMPORARY SUITES(ハリー・ポッターと呪いの子)」「OKLAHOMA!(オクラホマ!)」だった。

【動画】Hadestown trailer

 

ミュージカル『ミス・サイゴン』製作発表 “レジェンド”市村正親が卒業撤回!「息子がクリス役をやるくらいまでやりたい!」と宣言 


2020年5月23日(土)、東京・帝国劇場を皮切りに全国8都市にて上演されるミュージカル『ミス・サイゴン』の製作発表が2月26日、都内で行われ、エンジニア役の市村正親、駒田一、伊礼彼方、東山義久、キム役の高畑充希、昆夏美、大原櫻子、屋比久知奈、クリス役の小野田龍之介、海宝直人、チョ・サンウン、ジョン役の上原理生、上野哲也、エレン役の知念里奈、仙名彩世、松原凜子、トゥイ役の神田恭兵、西川大貴、ジジ役の青山郁代、則松亜海らが登場して劇中歌の数々を圧倒的な歌唱力で披露した(下記動画参照)。

【動画】ミュージカル『ミス・サイゴン』製作発表記者会見~楽曲披露


本作はベトナム戦争陥落間近のサイゴンを舞台に、アメリカ兵クリスとベトナム人のキムの愛と別離を描いた物語。1992年の初演以来、日本での通算上演回数は1368回となる。

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約200名の一般オーディエンスが見守る中、製作発表スタート。冒頭、スクリーンでこれまでの舞台映像が流れ、バラバラバラ……とヘリコプターが遠ざかる音の後、全キャストがステージに登場し「火がついたサイゴン」を熱唱。アンサンブル40名、プリンシパル20名の総勢60名という大カンパニーはステージの上から溢れんばかり、そして笑顔と確かな声量で歌い上げていた。

その後フォトセッションを挟んで、プリンシパルキャストが残り、会見となった。

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青山郁代

青山郁代

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則松亜海

則松亜海

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神田恭兵

神田恭兵

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西川大貴

西川大貴

今回初めて出演が決まったキャストは「前回はアンサンブルでした」「メインキャストは念願だった」、また前回に引き続き同役を演じる事になったキャストは「新たな気持ちで臨みたい」「新しいキャストの皆さんと一緒に出来る事が嬉しい」などと口々に今の気持ちを述べていく。

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知念里奈

知念里奈

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仙名彩世

仙名彩世

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松原凜子

松原凜子

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上原理生

上原理生

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上野哲也

上野哲也

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小野田龍之介

小野田龍之介

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海宝直人

海宝直人

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チョ・サンウン

チョ・サンウン

クリス役を演じる小野田は「4年ぶりという事で4年経ったからこそ感じ取れるものを大切に感じながら稽古をしたい」、海宝は「2008年の時にアンサンブルで初参加。当時19歳だったんですが、こうしてまた戻ってこれるのが心から嬉しいと思っています」、チョは「日本では劇団四季の舞台が最後だったので、また日本の舞台に立てる事が嬉しい。(小野田、海宝を見ながら)友達と仲良くなって頑張りたい」とコメント。チョが共演者を“友達”と表現した時にあたたかい笑い声が起きていた。

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高畑充希

高畑充希

キム役の高畑は今回初出演。「子どもの頃から『ミス・サイゴン』を観ていたので、憧れのカンパニーに入れた事が最高に嬉しい」と語る。作品についての思い出を聴かれると「芝居中に偶然、ヘリが止まってしまって、(エンジニア役の)筧(利夫)さんが15分フリートークしてくださった回を観ました」と笑顔を見せる。憧れではあったがキム役は自身にとって遠い存在だったと思いを述べる高畑は「今年28歳で、もしチャレンジできるならそろそろ最後なんじゃないかと思ったので、ダメ元でオーディションを受けてみようと思って受けてみたのが一昨年。決まった時はびっくりしたし、嬉しかったけど、今はどうしようという感じです」と素直な心境を表した。ミュージカル出演が7年ぶりと語る高畑は、舞台に出ていない間のボイストレーニングについて「全然やってなかった。なので、お尻に火がつきまして……」と自分のお尻に目線をやると「どれどれ?」と言わんばかりに市村も覗き込んで笑っていた。

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「お尻に火がついて」という高畑さんに「どれどれ?」と覗き込む市村さん(駒田さんも!)

「お尻に火がついて」という高畑さんに「どれどれ?」と覗き込む市村さん(駒田さんも!)

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昆夏美

昆夏美

昆は「前回、喉の病気になって名古屋公演の途中から降板する事となり、ご迷惑をおかけしましたし、自分としても悔しい想いをした。今回出演出来る事が本当に嬉しい」とかみしめるように語る。

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大原櫻子

大原櫻子

高畑と同じく初出演の大原は「稽古前なので自分がどんな風に演じるのか正直分からないですが、心を込めて演じたい」と決意を述べる。本作にまつわるエピソードとして「デビュー映画の打ち上げのときに『ミス・サイゴン』の歌を歌って、そこからスタッフさんが初舞台のオファーをくださったりと、すごくご縁のある作品」と語っていた。

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屋比久知奈

屋比久知奈

屋比久も今回初出演。「プレッシャーもパワーに変えて挑みたい」と意気込んだ。

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東山義久

東山義久

エンジニア役に初めて挑む東山は「市村さん初め多くのキャスト、スタッフの皆さんの熱意と情熱が伝わってきます。初日から千秋楽まで誠心誠意務めていきたい」とコメント。「最初に帝劇に立った時は、『エリザベート』のトートダンサーとして踊っていた。こんな形でまた帝劇に帰って来れたのは身が引き締まる思いです」と自身の足跡を振り返る東山は、他のエンジニア役には負けない点として「足を無駄に上げるようなエンジニアとか、柔軟性を生かしたエンジニアをやってくのかな」とダンス巧手ならではの笑いを誘っていた。

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伊礼彼方

伊礼彼方

同じく初エンジニア役の伊礼は緊張のせいか、最初の挨拶で噛みまくり。「まさか市村さんの隣に居る事でこんなに緊張するとは想像していなかった。やはり歴史を作った方なんだなあ。貴重な経験なので、しっかりと。盗めるものは盗んでいきたい」と市村をリスペクト。なお自身を「フランス人寄りのエンジニア」と表現して会場の観客に魅惑の微笑みを送っていた。

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駒田一

駒田一

今回で3度目のエンジニア役となる駒田は「初演の時はただがむしゃらにやっていただけですが、前回は少しだけ地に足を付けて演じる事が出来たかな、今回はもっともっと、いろんなところを見まわしながら演じたい」と経験者ならではのコメントを口にした。

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いい笑顔!!

いい笑顔!!

そしてレジェンド・市村の番となる。「初演から出ています!」と高らかに宣言し、笑いを誘う市村は、「前回卒業宣言をしましたが、また戻ってきました! 待っててくれた人!?」と声を上げるとキャストたちから歓声が沸き起こる。前回の卒業宣言を撤回して今回復活したことについて問われると「そのほうがお客さんが入るかなと思って。計算通りです」と冗談を飛ばすと、キャストもオーディエンスも大笑い。「今回はまたゼロからやってみたいなと思っています。前にやったことはすっかり忘れて、やったことのないような方向から作っていけたら」と改めて本作に挑む事を宣言した。なお、いつまでエンジニア役をやりたいか、との質問が飛ぶと「今は、続けられる限りやってくれと言われてまして。120歳……(笑)。できるだけ長く」と言った矢先に「あ! 息子がクリス役をやるくらいまで!」と元気に返し、相変わらずの子煩悩ぶりを見せていた。

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市村正親

市村正親

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製作発表の後は再び歌唱披露。メドレー形式で「世界が終わる夜のように」「トゥイの死」「今も信じてるわ」「生き延びたけりゃ」「命をあげよう」「ブイドイ」そして「アメリカン・ドリーム」を高らかに歌い上げ、締めくくった。

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【動画】ミュージカル『ミス・サイゴン』製作発表記者会見より

 

取材・文・撮影=こむらさき

ワッツ・オン・ブロードウェイ?~B’wayミュージカル非公式ガイド【2020年春編】


新型ウイルスの影響で、2020年3月12日から4月12日まで全作品が公演中止、という前代未聞の事態に陥っているブロードウェイ。春の開幕ラッシュの真っ最中だったため、既に初日を秋まで延期した公演もあり、また6月に予定されていたトニー賞も延期が発表された。ほかの公演もどうなってしまうのか、心配は尽きないが、海の向こうでネガティブになっていても何一ついいことはないのでここは通常営業で。ロングラン作品を3本ずつピックアップしてちょっと長めに紹介するコーナーに続き、4月13日以降に開幕・再開する予定のミュージカルをいつも通り(ちょっとだけ形式を変えて)、とりあえず全部!お届けする。

■『ウィキッド』

『オズの魔法使い』に登場する“西の悪い魔女”エルファバと“南の善い魔女”グリンダにスポットを当てた前日譚。と言うと夢々しいファンタジーのような印象を与えてしまうかもしれないが、社会の在り方にまで思いを馳せさせられる、示唆に富んだストーリーが最大の魅力だ。それをゾクゾクする音楽(スティーヴン・シュワルツ)とスペクタクルな演出(ジョー・マンテロ)とで描き出す、今上演されている中では筆者が一番好きな作品。特に一幕ラストの、エルファバが決意の歌を歌い上げながら空高く飛び上がるシーンは圧巻、必見、思い出すだけで鳥肌ものだ。劇団四季による日本版は、訳詞の見解の不一致により筆者的にとっては別物なので(私見です)、観たくなったらブロードウェイに行くしかない。

■『ブック・オブ・モルモン』

日本では馴染みの薄いモルモン教を題材にしていること、アフリカ人役が大勢必要なことから、日本での上演はないだろうと、開幕してすぐの2011年に観て以来ずっと信じてきたのだが。先日ロンドンで観て、今なら意外とアリなんじゃないかという気がしてきた。既に古典…とは言わないまでも名作の域には入ってきているので、勢いそのままにお届けするのではなく、「向こうで10年近く超満員なのはこんな作品です」という紹介的な上演でも十分価値はあるし、何よりその不謹慎な面白さは日本人にこそウケると思うのだ。という妄想はさておき、音楽と振付も最高に楽しく、英語もとても簡単なので普通にオススメ。

■『アラジン』

そんな『モルモン』と同じケイシー・ニコロウの演出・振付作品。つくづくエンターテイニングな人だ(ほかに『サムシング・ロッテン!』『ミーン・ガールズ』『ザ・プロム』なども担当)。エンターテイニング過ぎるのか、トニー賞からは軽視されがちだが、とにかく盛り上がりたいなら彼の作品を選んでおけばほぼ間違いないのでは。また、こちらは『ウィキッド』と違って劇団四季による日本版も素晴らしく、原作のアニメ映画に昨年公開された実写映画にと参考資料がたくさんあるため、予習してから観たい派には最適の作品だ。

【2019-2020シーズンの新作】

*情報は3月29日時点のもの

■4~6月に始まる予定だった作品

『Caroline, or Change』秋に延期
2004年のトニー賞ノミネート作品の、2018年にロンドンで好評を得たリバイバル版。
https://www.roundabouttheatre.org/get-tickets/2019-2020-season/caroline-or-change/

『Flying Over Sunset』秋に延期
3人の著名人がLSD(当時は合法)を使用していた事実を元にJ・ラパインが創作する新作。
https://www.lct.org/shows/flying-over-sunset/

 

『シング・ストリート』プレビュー開始日未定
同名のアイルランド映画(副題「未来へのうた」)の舞台化。オフでの好評を受けてBW入り。
https://singstreet.com/


■既に始まっていた作品

『カンパニー』プレビュー期間中に中止に/開幕日未定
ソンドハイムの傑作コメディを『ウォーホース』の演出家でリバイバル。P・ルポンが出演。
https://companymusical.com/

『David Byrne’s American Utopia』秋に再開幕
ミュージカルに近いコンサート。期間限定公演として開幕→延長が決定→再演が決定。
https://americanutopiabroadway.com/

『ダイアナ』プレビュー期間中に中止に/開幕日未定
ダイアナ元妃の人生を『メンフィス』の作家と『カム・フロム・アウェイ』の演出家で。
https://thedianamusical.com/

『Girl From the North Country
ボブ・ディランの楽曲がちりばめられてはいるが、作りとしては完全にプレイ。要英語力。
https://northcountryonbroadway.com/

『Jagged Little Pill』
アラニス・モリセットの同名アルバムをミュージカル化。『ピピン』の演出家の最新作。
https://jaggedlittlepill.com/

『ムーラン・ルージュ!』
バズ・ラーマン監督映画をアレックス・ティンバースが演出する話題作。人気沸騰中!
https://moulinrougemusical.com/

『ミセス・ダウト』プレビュー期間中に中止に/開幕日未定
同名映画を『サムシング・ロッテン!』の作家兄弟と売れっ子演出家J・ザックスが舞台化。
https://mrsdoubtfirebroadway.com/

『SIX: The Musical』プレビュー期間中に中止に/開幕日未定
ロンドンで大ヒット中。ヘンリー8世の6人の妻がガールズパワーを炸裂させる痛快作!
https://sixonbroadway.com/

『Tina:ザ・ティナ・ターナー・ミュージカル』
ロンドンでの好評を受けてBW入り。オリヴィエ賞ノミネートの主演女優が続投!
https://tinaonbroadway.com/

『ウエスト・サイド・ストーリー』
ヴァン・ホーヴェ(演出)とケースマイケル(振付)が名作を大胆にアレンジ。期待大!
https://westsidestorybway.com/

【ロングラン作品】

■日本で既に上演された/されている作品

『アラジン』
ディズニーアニメが舞台ならではの手法で表現された秀作。魔法の絨毯は本当に魔法。
https://www.aladdinthemusical.com/

『シカゴ』
『オペラ座の怪人』に次ぐロングラン記録を更新中の名物作。出来は割とキャスト次第。
https://chicagothemusical.com/

『ライオンキング』
開幕から20年以上経つというのに、未だ入場率がほぼ毎週100%を超える大ヒット作。
https://www.lionking.com/

『オクラホマ!』
1943年初演の名作を21世紀の解釈でリバイバル。2019年トニー賞。1月19日まで。
https://oklahomabroadway.com/

『オペラ座の怪人』
言わずと知れた世界的メガヒット作。圧倒的な知名度ゆえ、劇場では日本人に遭遇しがち。
http://www.thephantomoftheopera.com/

『ウィキッド』
開幕から15年が経ち、ようやくチケットに多少の余裕が。定期的に観たい傑作。
https://wickedthemusical.com/

■日本未上演の作品

『Ain’t Too Proud』
『ジャージー・ボーイズ』チームが描くテンプテーションズの軌跡。3月より新キャストに。
https://www.ainttooproudmusical.com/

『ビートルジュース』
ティム・バートン監督映画の舞台化。映画を見ておかないと厳しいかも?6月6日まで。
https://beetlejuicebroadway.com/

『ブック・オブ・モルモン』
日本では永遠に上演されなさそうだが超絶面白い。モルモン教だけwikiで調べて観るべし。
https://bookofmormonbroadway.com/

『カム・フロム・アウェイ』
「911」の日、カナダの小さな町に起こった実話をシンプルだが力強い演出で描く感動作。
https://comefromaway.com/

『ディア・エヴァン・ハンセン』
深遠なテーマをスタイリッシュに描く、2017年のトニー賞受賞作。絶対日本でやると思う。
https://dearevanhansen.com/

『アナと雪の女王』
舞台ならではの表現が見当たらない残念作だが、生レリゴーは最高。今秋から日本で上演!
https://frozenthemusical.com/

『Hadestown』
『グレコメ』の演出家が現代的に描くギリシャ神話。2019年のトニー賞で8冠を達成。
https://www.hadestown.com/

『ハミルトン』
開幕5年目にして未だ超入手困難なモンスター級ヒット作。文句なしに革新的。観るべし。
https://hamiltonmusical.com/

『ミーン・ガールズ』
同名映画の舞台化。なぜか人気。アメリカ的なノリについていける自信があればどうぞ。
https://meangirlsonbroadway.com/

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このころのような活気が戻ることを祈念して

このころのような活気が戻ることを祈念して


ミュージカル『ビリー・エリオット~リトル・ダンサー~』開幕延期、7・8月公演中止に


2020年7月12日から上演が予定されていたDaiwa House presents ミュージカル『ビリー・エリオット~リトル・ダンサー~』は、開幕延期が決定した。新型コロナウイルスに関する緊急事態宣言の延長により稽古環境を整えることができなくなったことが理由。

これに伴い、東京公演のうち、既にチケット販売中だった7月12日~8月30日の計60ステージが公演中止となった。中止公演のチケット購入者には払い戻し対応がおこなわれる(詳細は公式サイト https://horipro-stage.jp/stage/billy2020/参照)。また、9月以降の開幕日やチケットの発売スケジュールについては、今後の状況を鑑み、詳細が決定次第、改めて主催より告知される。

ミュージカル『ビリー・エリオット~リトル・ダンサー~』は、2019年12月のビリー役最終オーディション以来、7月の開幕に向けて入念な準備が進められてきた。緊急事態宣言により自宅待機を余儀なくされた後も、4人のビリー達は自宅にて必死のレッスンを続けていた。しかし緊急事態宣言が延長され、広いスペースでのレッスンが6月まで再開できなくなったことを受け、この度の苦渋の判断となった。主催は「稽古の環境が整ったあかつきには、カンパニー一丸となって稽古に励み、皆様に感動の舞台をお届けしたく思っておりますので、それを楽しみにしていただければ幸いです」と述べている。

名曲の数々に陶酔必至! 今や幻の映画版ブロードウェイ・ミュージカル3選 by 中島薫/ホーム・シアトリカル・ホーム~自宅カンゲキ1-2-3 [vol.23]

 

おうちをシアトリカルなエンタメ空間に! いま、自宅で鑑賞できる演劇・ミュージカル・ダンス・クラシック音楽の映像作品の中から、演劇関係者たちが激オシする「My Favorite 映像」の3選です。(SPICE編集部)



ホーム・シアトリカル・ホーム~自宅カンゲキ1-2-3  [vol.23] <ミュージカル映画編>
名曲の数々に陶酔必至! 今や幻の映画版ブロードウェイ・ミュージカル3選​ by 中島薫

【1】『ジプシー』(1962年・映画版)
【2】『バイ・バイ・バーディー』(1963年・映画版)
【3】『不沈のモリー・ブラウン』(1964年・映画版)​
 

ブロードウェイとハリウッドの蜜月時代

今なお再上映を繰り返す、ミュージカル映画の最高峰『ウエスト・サイド物語』(1961年)。世界中で大ヒットしたこの作品に刺激され、1960年代のハリウッドは、ブロードウェイ・ミュージカルの映画化が盛んだった。ただ、公開から半世紀以上を経た今、日本では忘れ去られた映画も多い。そこで、現在DVDで楽しめる3作をオススメしよう。いずれもブロードウェイのヒット・ミュージカルで、何よりも楽曲が魅力的。しかも元の舞台のエッセンスを損なわずに、比較的忠実に映画化されており、安心して鑑賞できる。また、いずれも巨費を投じて製作された大作で、スケールの大きいミュージカル・ナンバーが見もの。早速、年代順に紹介しよう。

【1】『ジプシー』(1962年)

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映画公開時に発売されたサントラLP

映画公開時に発売されたサントラLP

1959年のブロードウェイ初演(続演702回)が、絶唱で鳴らしたエセル・マーマン。以降リバイバル上演では、アンジェラ・ランズベリー(1974年)やバーナデット・ピータース(2003年)、2008年のパティ・ルポンと、アクの強いディーバ系大物女優が主役を張ってきた名作だ。原作は、実在したストリッパー、ジプシー・ローズ・リーの回想録。彼女と母親ローズの葛藤を描いており、冒頭のスターたちが演じたのがローズだった。この母親が、ステージ・ママの要素をすべて兼ね備えたタフな女性。娘をスターにするためなら手段を選ばず、ゴリ押しとハッタリを繰り返すが、どこか憎めない。あらゆるミュージカル女優が憧れるのが、『ジプシー』のローズ役なのだ(1982年の日本初演は草笛光子)。

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ロザリンド・ラッセル

ロザリンド・ラッセル

映画版のローズは、コメディーを中心に活躍したロザリンド・ラッセル(1907~76年)。ドスの効いたオッサン声で、時に辟易するほどの派手な芝居に圧倒される。旅廻りの一座を組んで、2人の娘を売り出そうと躍起になるローズ。ところが、芸達者な妹は駆け落ち。しかし転んでもタダでは起きぬ猛母は、シャイで地味な姉に望みを託す。やがては美しいストリッパーへと生まれ変わる、この姉を演じるのがナタリー・ウッドだ。『ウエスト・サイド物語』に続くミュージカル出演で、くっきりした個性を打ち出して流石に上手い。加えて、「ウエスト・サイド」で彼女の歌は吹き替えられたが、本作では自ら歌っている。またラッセルのボーカルは、声質の良く似た歌手リサ・カークが大部分吹き替えた。

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ナタリー・ウッド

ナタリー・ウッド

そしてこの作品、とにかく楽曲が素晴らしい。作詞は、今年90歳の誕生日を迎えたスティーヴン・ソンドハイム、作曲がベテランのジューリィ・スタイン。期待をかけた妹に去られたローズが、姉に対し「今度はあんたをスターにしてみせる!」と歌う〈エヴリシングズ・カミング・アップ・ローゼズ〉を始め、「前向きにトライあるのみ」と信条を歌う〈サム・ピープル〉、ラストで自分の人生を振り返り、フラストレーションを爆発させる〈ローズの出番〉など、ブロードウェイならではのドラマチックで華やかなナンバーが揃っている。監督は、『哀愁』(1940年)の名匠マーヴィン・ルロイ。

★「復刻シネマライブラリー」にてDVD化され販売中、TSUTAYA、Amazon等での購入可。
 


【2】『バイ・バイ・バーディー』(1963年)

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アメリカ公開時のポスター

アメリカ公開時のポスター

人気絶頂のロックンロール歌手バーディーが、軍隊に召集される事となり、ティーンエージャーのファンたちは大騒ぎ。これに大人たちも振り回されるというストーリーは、実際に起きたエルヴィス・プレスリーの徴兵騒動(1958年)を見事にパロディー化している。ブロードウェイでは1960年に初演。ベトナム戦争に介入する以前の、ひたすらイノセントで健全だったアメリカを舞台にしたミュージカル・コメディーで、続演607回のヒット作にも関わらず、未だ翻訳上演されていない作品でもある。

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アン=マーグレット

アン=マーグレット

映画版はキャストが魅力的だ。全米のファンを代表して、テレビの「エド・サリヴァン・ショウ」に出演し、バーディーにキスをする光栄に浴したオハイオ在住の少女がアン=マーグレット。さらにバーディーの座付き作曲家を演じるのが、舞台版にも出演したディック・ヴァン・ダイク(『メリー・ポピンズ』)、その秘書がジャネット・リー(『サイコ』)と個性的な面々が揃った。中でも、この映画で大ブレイクしたアン=マーグレット(1941年~)が凄い。本来純朴な10代の役なのだが、妙にアカ抜けてセクシー。また愛嬌もたっぷりで、映画巻頭で彼女が歌う主題歌〈バイ・バイ・バーディー〉で一気に惹きつけられる。1960年代後半からは、ラスベガスのワン・ウーマン・ショウで活躍した彼女は、ダンスも抜群だ。特に、ピンクのドレスで縦横無尽に踊りまくる〈やる事がいっぱい〉は、俊敏でキレの良い振付も相まって、本作のハイライトとなった。振付は、活気に満ちた群舞で評価が高かったオンナ・ホワイト。

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ティーンたちが賑やかに歌い踊る〈やる事がいっぱい〉

ティーンたちが賑やかに歌い踊る〈やる事がいっぱい〉

前記楽曲の他にも、リー・アダムス作詞、チャールズ・ストラウス作曲のナンバーは佳曲が多い。当時日本でもヒットした美しいバラード〈ワン・ボーイ〉や、ヴァン・ダイクが達者なソング&ダンスで本領発揮の〈プット・オン・ア・ハッピー・フェイス〉、大人たちが「近頃の子供には手を焼くよ」と嘆く〈キッズ〉など、正調ミュージカル・コメディー系の明朗な曲で固められている。監督のジョージ・シドニーは、『アニーよ銃をとれ』(1950年)を始め、秀作ミュージカルを数多く放ったベテラン。職人技でテンポ良くまとめ上げている。

★「復刻シネマライブラリー」にてDVD化され販売中、TSUTAYA、Amazon等での購入可。
 


【3】『不沈のモリー・ブラウン』(1964年)

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主演のデビー・レイノルズを表紙にあしらったプログラム

主演のデビー・レイノルズを表紙にあしらったプログラム

『ジプシー』と同様に、実在の人物がヒロイン。金鉱で財を築き、タイタニック号の沈没事故(1912年)では多くの人命を救った、破天荒な女傑モリー・ブラウンの半生を綴る物語だ(レオナルド・ディカプリオ主演の映画『タイタニック』では、キャシー・ベイツが演じていた)。1960年にブロードウェイで初演(続演532回)。日本では1986年に、大地真央の主演で上演されている(邦題は『プリンセスモリー』)。

映画版「モリー」の主役は、『雨に唄えば』(1952年)のデビー・レイノルズ(1932~2016年)。ブロードウェイの舞台を観て以来、「モリーこそ私が演じるべき役」と確信した彼女は、制作陣に猛烈に売り込んで役を獲得した。その甲斐あって大熱演で、正に全編デビー・レイノルズ・ショウ。コロラドの山奥で育った粗野な少女時代から、鉱山師と結婚し成金に。やがてレディの教養を身に付けるべく、欧州に渡るという粗筋で分かるように、見せ場の多い大役を嬉々として演じている。ミュージカル・ナンバーでは、男兄弟と暴れ回りながら歌う〈まだ負けちゃいない〉や、酒場の荒くれ男たちを相手にエネルギッシュに歌い踊る〈みんな酒場へ直行だ〉が圧巻。小柄な身体を駆使してのソング&ダンスはユーモアに溢れ、観ているこちらも心が浮き立ってくる。きびきびと闊達な振付はピーター・ジェナーロ。『ウエスト・サイド~』のブロードウェイ初演(1957年)では、ジェローム・ロビンスの元で共同振付師を務めた才人で、プエルトリコ系シャークスの振付は、実はジェナーロがほとんど手掛けた。

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迫力たっぷりのナンバー〈みんな酒場へ直行だ〉

迫力たっぷりのナンバー〈みんな酒場へ直行だ〉

作詞作曲は、『ザ・ミュージックマン』(1957年)のメレディス・ウィルソン。軽快かつ、古き良き牧歌的なナンバーを得意とした。モリーと結ばれる鉱山師を演じるのが、舞台版にも出演し、後年『ファーゴ』(1996年)などで、性格俳優としても渋い演技を見せたハーヴ・プレスネル。元々オペラ畑出身の彼は、ソロの〈決してノーとは言わない〉などで、堂々たる歌声を披露する。監督はチャールズ・ウォルターズ。『イースター・パレード』(1948年)や『上流社会』(1956年)など、ミュージカル映画に佳作が多い。

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レイノルズとハーヴ・プレスネル

レイノルズとハーヴ・プレスネル


 
★「復刻シネマライブラリー」にてDVD化され販売中、TSUTAYA、Amazon等での購入可。
 

文=中島薫(音楽評論家)
*ここに掲載した写真はパブリック・ドメイン、あるいは著者の所有物です。

自宅でブロードウェイミュージカルが楽しめる「おうちブロードウェイ」の放送が開始 第一弾はミュージカル『シー・ラヴズ・ミー』


2020年7月より、WOWOWにて、自宅でブロードウェイミュージカルが楽しめる「おうちブロードウェイ」の放送が開始されることが決定した。

放送は4カ月連続となり、「松竹ブロードウェイシネマ」シリーズとして上映されたブロードウェイミュージカルの中から4作品が放送される。第一弾の作品は、トム・ハンクス&メグ・ライアン主演の大ヒット映画『ユー・ガット・メール』の原点となった、第70回トニー賞受賞のミュージカル『シー・ラヴズ・ミー』の劇場上映版。8月は映画『ロード・オブ・ザ・リング』シリーズのオーランド・ブルームがブロードウェイデビューにして主演を務めたブロードウェイ版『ロミオとジュリエット』

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ミュージカル『シー・ラヴズ・ミー』 (C)BroadwayHD/松竹 (c)Joan Marcus

ミュージカル『シー・ラヴズ・ミー』 (C)BroadwayHD/松竹 (c)Joan Marcus

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ブロードウェイ版『ロミオとジュリエット』 (C)BroadwayHD/松竹 (c)Carol Rosegg

ブロードウェイ版『ロミオとジュリエット』 (C)BroadwayHD/松竹 (c)Carol Rosegg

そして、9月はビング・クロスビーとフレッド・アステアが主演し、名曲「ホワイト・クリスマス」がオリジナル曲として登場した1942年のミュージカル映画を、新作として舞台化したミュージカル『ホリデイ・イン』。さらに10月には、1933年公開のアカデミー賞ノミネート・名作ミュージカル映画『四十二番街』を舞台化したブロードウェイ作品『42ndストリート』の劇場上映版が放送される予定だ。

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ミュージカル『ホリデイ・イン』 (C)BroadwayHD/Joan Marcus Photography/松竹

ミュージカル『ホリデイ・イン』 (C)BroadwayHD/Joan Marcus Photography/松竹

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ミュージカル『42nd ストリート』 (C)BroadwayHD/松竹 (c)Brinkhoff/Mogenburg

ミュージカル『42nd ストリート』 (C)BroadwayHD/松竹 (c)Brinkhoff/Mogenburg

毎年6月初旬に行われるトニー賞授賞式の開催延期も発表され、劇場でミュージカルを楽しむ機会がなかなかない状況だからこそ、おうちでブロードウェイミュージカルを楽しもう。

観劇の予習に! 2020年秋冬上演予定ミュージカルの映画版3選/ホーム・シアトリカル・ホーム~自宅カンゲキ1-2-3 [vol.26]

 

おうちをシアトリカルなエンタメ空間に! いま、自宅で鑑賞できる演劇・ミュージカル・ダンス・クラシック音楽の映像作品の中から、演劇関係者たちが激オシする「My Favorite 映像」の3選です。(SPICE編集部)



ホーム・シアトリカル・ホーム~自宅カンゲキ1-2-3  [vol.26] <ミュージカル映画編>
2020年秋冬上演予定ミュージカルの映画版3選​ by 松村蘭(らんねえ)

【1】『プロデューサーズ』(2005年・映画版)
【2】『NINE』(2009年・映画版)
【3】『レント』(2005年・映画版)​
 


劇場に行きたい! でも行けない! じゃあ今できることは? ……次の観劇のために予習をしておくことだ。

というわけで、2020年秋冬に日本で上演予定の3つのミュージカル作品、『プロデューサーズ』『NINE』『RENT』をそれぞれ映画化したソフトをご紹介する。純粋にミュージカル映画として楽しむもよし、ストーリーや曲をしっかり頭に入れて観劇に備えるもよし、今年出演予定のキャストに脳内変換して想像を膨らませるもよし。いずれもミュージカル映画として素晴らしい作品なので、ご家庭で思う存分楽しんでほしい。
 

【1】ひたすらにミュージカルへの恋しさ募る『プロデューサーズ』(2005年・映画版)

映画『プロデューサーズ』 予告編


「ああ、ブロードウェイでミュージカルが観たい」

エンドロールを観ながら、多くの人がそう思うのではないだろうか。

ミュージカル映画『プロデューサーズ』(2005年)は、トニー賞12部門を受賞した同名の大ヒットミュージカルを基に映画化した作品。ミュージカル版で演出を手掛けたスーザン・ストローマン自身が映画の監督も務めている。さらに、本作にはミュージカルのオリジナルキャストが4名出演(ネイサン・レイン、マシュー・ブロデリック、ゲイリー・ビーチ、ロジャー・バート)しており、ミュージカルの舞台の要素が色濃く反映されている。

ちなみに元祖『プロデューサーズ』は、意外なことにミュージカル作品ではない。元々はコメディ映画の巨匠として知られるメル・ブルックス監督/脚本の1968年の映画作品で、こちらはアカデミー脚本賞を受賞している。

物語の舞台はもちろん、ニューヨークの劇場街ブロードウェイだ。

主人公は二人の男。かつては“ブロードウェイの王様”と呼ばれたが、今は落ち目のプロデューサーのマックス・ビアリストック(ネイサン・レイン)。そしてブロードウェイのプロデューサーになることを密かに夢見る、冴えない会計士のレオ・ブルーム(マシュー・ブロデリック)。

ある日、レオが帳簿確認のためマックスの事務所を訪れた際、「ミュージカルは大コケした方が儲けられる」ことに気付く。マックスとレオは、最悪の脚本・最悪の演出家・最悪のキャストを揃えて一晩で打ち切りになるような駄作を作り、リオへ高跳びするという無茶な計画を立てるのだが……。

ストーリーはバックステージもののドタバタコメディ。決してお上品とは言えないネタや直接的な表現も多く、登場人物全員の癖がやたらめったら強い。

マックスはニューヨーク中の老婦人に最後のロマンスを与え、それと引き換えに資金を受け取るのが常套手段。レオは臆病でヒステリー持ち。精神安定のお守りとして、赤ちゃんの頃から青い毛布の切れ端を肌身放さず持っている。

そんな二人が計画を進める中で登場するのが、ヒトラーに心酔するドイツ人脚本家フランツ・リープキン(ウィル・フェレル)、女優志望だがスウェーデン訛りの強いセクシー美女ウーラ(ユマ・サーマン)、明るいショーが得意なゲイの演出家ロジャー・デ・ブリー(ゲイリー・ビーチ)など……強者だらけだ。

この破天荒なキャラクターたちの織りなす喜劇を観ていると、「そうそう、ミュージカルってやっぱり最高だよね」と思えてくるから不思議である。きっと作品の随所にブロードウェイミュージカルへの愛が溢れているからなのだろう。ミュージカル好きの方は、ぜひその目で確かめていただきたい。

日本版のミュージカル『プロデューサーズ』は、2005年と2008年にマックス役を井ノ原快彦(V6)、レオ役を長野博(V6)のコンビで上演されている。そして2020年11月東急シアターオーブで、なんと12年ぶりに上演予定だ。マックス役は井上芳雄、レオ役は吉沢亮と大野拓朗のダブルキャスト、演出は福田雄一が務める。

★TSUTAYAレンタル、Amazon等でのDVD/Blu-ray購入、Amazon Prime Video(レンタル・購入あり)他

 

【2】ワイン片手にくつろぎながら映像美に酔いたい『NINE』(2009年・映画版)

映画『NINE』予告編

 

かつて、これほどまでに映像美にこだわったミュージカル映画があっただろうか。

イタリア映画の巨匠フェデリコ・フェリーニの自伝的映画『8 1/2』(1963年)を原作に、脚本アーサー・コピット、作詞/作曲モーリー・イェストンという、ミュージカル『ファントム』でもお馴染みのコンビが生み出したブロードウェイ・ミュージカル『NINE』。そのミュージカル作品を、3度のアカデミー主演男優賞受賞経験を持つ名優ダニエル・デイ=ルイス主演で映画化したのが、今回ご紹介するミュージカル映画『NINE』(2009年)だ。監督はブロードウェイで振付家としても活躍していたロブ・マーシャル。他に『シカゴ』(2002年)や『メリー・ポピンズ リターンズ』(2018年)などの監督作品がある。

ダニエル・デイ=ルイス演じるイタリアの色男グイド・コンティーニは、天才映画監督であり脚本家。10日後に新作映画の撮影を控えている。既にタイトルと主演女優も決まっている。だが肝心の脚本がない。

そう、グイドはいわゆるスランプに陥っているのだ。

精神的にも体力的にも追い込まれた彼は、ついに記者会見の場から逃げ出してしまう。していることは正直情けないのだが、グイドが高級車アルファロメオを颯爽と乗りこなす様は悔しいほどにかっこいい。ローマから海沿いの街アンツィオのホテルへ向かう道中、淡いブルーのオープンカーがイタリアの街並みに実によく映える。

『NINE』はミュージカル映画ではあるのだが、登場人物が歌い踊りながら物語が展開していくというシーンはあまりない。ストーリーが進む中で、ときおり空想の世界としてミュージックビデオのようなショー・シーンが展開されるという演出だ。

ショー・シーンはいずれも絢爛豪華で目が離せない。大掛かりなセット、大勢のキャスト、華やかな歌とダンス、スタイリッシュなカメラワーク……監督自身が振付も担当しているだけあって、力の入れようが半端じゃない。

本作をより一層華やかに彩っているのが、グイドを取り巻く女優陣だ。グイドの妻はマリオン・コティヤール、愛人にペネロペ・クルス、ミューズはニコール・キッドマン、記者のケイト・ハドソン、少年時代の思い出の女ファーギー、さらに衣装デザイナーにジュディ・デンチ、母親にはソフィア・ローレンときた。こうして名前を並べるだけで目眩がしそうな顔ぶれのスターたちが、それぞれのグイドとの愛の形を見せてくれる。

日本では2020年11月に東京・TBS赤坂ACTシアター、12月に大阪・梅田芸術劇場メインホールにて、演出家藤田俊太郎×主演城田優の初タッグで上演予定だ。2020年5月時点で、主演の城田を除くキャストはまだ明かされていない。一体どんな女優陣が集うのか楽しみだ。 

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【3】中毒性のある音楽と胸に響くメッセージで何度も観たくなる『RENT』(2005年・映画版)

映画『Rent』 (2005) - Trailer

 

1日1日を大切に、一生懸命生きているだろうか。ふと立ち止まって自分にそう問いかけたくなる、それが『RENT』だ。

1996年、ジョナサン・ラーソンの作詞/作曲/脚本でオフ・ブロードウェイにて初演されたミュージカル『RENT』は、その年のトニー賞ミュージカル部門最優秀作品賞をはじめ数々の賞を受賞。今もなお世界中に“レントヘッズ”(RENT-heads)と呼ばれる熱狂的ファンを生み出す程人気を誇る作品だ。ここでは、そのオリジナルキャストであるアンソニー・ラップ、アダム・パスカル、イディナ・メンゼルらが出演し、クリス・コロンバスが監督を務める映画『RENT』(2005年)を紹介する。

映画の冒頭、暗闇にタイトルが映し出される。ピアノ前奏と共に8つのスポットライトが舞台上に灯り、8人の若者の姿が浮かび上がる。この演出からもわかるように、本作は群像劇だ。ニューヨークの若き芸術家たちが懸命に生きる姿を通し、貧困、HIV/AIDS、ドラッグ、LGBTといった多様なテーマを描き出す。

彼らは歌の中で問いかける。「52万5600分という時間 人生の1年をどうやって計る?」

物語は1989年のクリスマスイブからはじまり、1990年のクリスマスイブで終わる。作中に登場する曲は冒頭の「Seasons of Love」をはじめ、ミュージカル史に残る名曲揃いだ。とてもここに全ては書ききれないが、ピックアップした曲と共にキャラクターやストーリーを抜粋して紹介したい。

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映画で「La Vie Boheme」が歌われるLife Cafeの外観。ニューヨーク旅行時に筆者が撮影。

映画で「La Vie Boheme」が歌われるLife Cafeの外観。ニューヨーク旅行時に筆者が撮影。

ニューヨークのイーストヴィレッジにあるビルのロフトに、映像作家のマークとロックミュージシャンのロジャーが住んでいた。二人とも夢はあるが貧しく、家賃(RENT)すら払えない生活を送っていた。

そんなある日、下の階に住むSMクラブのダンサー・ミミが、1本のろうそくを手にロジャーの部屋を訪ねてくる。彼女はろうそくに火をつけてほしいと言うが、実はそれはただの口実。ロジャーの気を引きたいミミと、自殺した恋人のことが忘れられないロジャー。二人の恋の駆け引きが展開される「Light My Candle」は、細かい設定は違えどプッチーニのオペラ『ラ・ボエーム』の劇中シーンと酷似している。『RENT』は1830年頃のパリを舞台にした『ラ・ボエーム』を、1990年頃の荒廃したニューヨークに置き換えた作品でもあるのだ。

マークとロジャーの友人の大学講師・コリンズは、ドラァグクイーンのドラマー・エンジェルと出会い恋に落ちる。二人がニューヨークの路上を駆け回りながら歌う「I'll cover you」は、何度観ても心が洗われる美しいシーン。貧しさも、性別も、人の目も関係ない。純粋に相手を思いやる気持ちが眩しいほどに溢れている。

ところかわって、華やかな婚約パーティー会場へ。婚約したのは二人の女性。美貌と自信を持つパフォーマーのモーリーン(マークの元恋人)と、ハーバード大卒の弁護士ジョアンヌ。少々奔放過ぎる性格のモーリーンに振り回されるジョアンヌは、婚約パーティーの場でのモーリーンの振る舞いに腹を立て、ついにケンカが勃発。「Take Me Or Leave Me」と歌い上げながら二人とも一歩も譲らず、女同士の熾烈な戦いが繰り広げられる。

『RENT』の登場人物に共通するのは、一瞬一瞬を全力で生きているということだ。このことは、作品に込められた「No Day But Today(あるのは今日という日だけ)」というメッセージにも通ずる。本作は20年以上前に生まれた作品だが、そのメッセージは決して色褪せることなく、現代社会を生きる私たちの胸に強く響く。

日本では2020年3月に来日公演が中止となったが、振替公演が同年12月に東京国際フォーラムホールCで予定されている。また、日本版はキャストを新たに東京・シアタークリエにて11月に上演予定だ。 

★TSUTAYAレンタル、Amazon等でのDVD/Blu-ray購入、Amazon Prime Video(レンタル・購入あり)他


文 = 松村蘭(らんねえ)

ミュージカル『ハミルトン』(トニー賞・ピューリッツァー賞受賞)、オリジナル・ブロードウェイ版の映像化作品をディズニープラスが世界同時独占配信


アメリカ建国の父祖たちの一人アレクサンダー・ハミルトンの生涯を描き、トニー賞11部門受賞をはじめ、グラミー賞、ローレンス・オリヴィエ賞、ピューリッツァー賞と主要賞を数々獲得したブロードウェイ・ミュージカル『ハミルトン』を、ディズニー公式動画配信サービス「Disney+ (ディズニープラス)」が、米国独立記念日の前日にあたる2020年7月3日(金)より世界同時配信、日本国内では同日16時より配信開始されることになった。製作は、ブロードウェイの制作陣からリン=マニュエル・ミランダジェフリー・セラートーマス・ケイルが参加、トーマス・ ケイルは監督も務める。

今回配信されるミュージカル『ハミルトン』は、ブロードウェイ・オリジナル版の舞台をそのまま撮影し映像化した作品。そのため視聴者は独自の近さで、ブロードウェイのステージを楽しむことができる。「演劇」と「映画」そして「動画配信」、それぞれが持つ最高の要素を融合させた結果、全く新しい方法で『ハミルトン』 を体験することができる。

なお、世界同時配信を実現するために、配信開始のタイミングでは英語音声のみとなり、日本語字幕版の配信については、決定次第、後日公式サイト等にて案内されるとのことだ。

ウォルト・ディズニー・カンパニー会長のロバート・ A ・アイガーは「このような力強いクリエイティブな方法で、人々に文化的インパクトを与え、心をつかむストーリーで魅了し、上演される芸術作品は過去10年間において、『ハミルトン』 のほかにありません 。リーダーシップや不屈の精神とは何か、そして愛と希望、一丸となって逆境に立ち向かう人々が描かれた本作は、非日常的な試練に直面している我々に勇気を与えてくれることでしょう。アメリカ独立記念日である7月4日の前夜にこのような作品をディズニープラスで配信することを、とても楽しみにしています 。また、リン=マニュエル・ミランダをはじめ、『ハミルトン』の素晴らしいチームのおかげで、当初の予定より一年以上も早くみなさんにご覧いただけることに、心より感謝しています。」とコメントしている。

さらに、製作・脚本・音楽・作詞・主演を務めるリン=マニュエル・ミランダは「トーマス・ケイル監督が、『ハミルトン』をこのように美しく映像化してくれたことを誇りに思います。彼は全ての視聴者がこの作品を自宅の特等席で観られることを可能にしてくれたのです。世界中が混乱に陥っている今年、米国独立記念日の週末に本作のリリースを早めてくれたディズニーとディズニープラスに心より感謝します。この作品を楽しみにしてくださっているファンの皆様のご要望にお応えし、今回の配信開始を実現できたことを本当に嬉しく思っています。この作品は私たちの誇りです。そして、早く皆様に観て頂きたいです。」とコメントを寄せた。

本作は、2016 年の6月にブロードウェイのリチャード・ロジャース ・シアターにて上演された舞台を撮影したもので、トニー賞脚本&作曲賞受賞のリン=マニュエル・ミランダがアレクサンダー・ハミルトン役、トニー賞ベスト男優賞受賞のレスリー・オドム・Jr.がアーロン・バー役、トニー賞ベスト助演男優賞受賞のダヴィード・ディグスがラファイエット侯爵/トーマス・ジェファーソン役、トニー賞ベスト女優賞受賞のレネー・エリス・ゴールズベリーがアンジェリカ・シュイラー役、クリストファー・ジャクソンがジョージ・ワシントン役、ジョナサン・グロフが英国王ジョージ3世役、フィリッパ・スーがエリザ・ハミルトン役、ジャスミン・セファス・ジョーンズがペギー・シュイラー/マリア・レイノルズ役、オキエリエテ・オナオドワンがヘラクレス・マリガン/ジェームズ・マディソン役、そしてアンソニー・ラモスがジョン・ローレンス/フィリップ・ハミルトン役をそれぞれ演じている。

史上空前の大ヒットを記録し、ブロードウェイで最もチケット入手が困難な作品『ハミルトン』は、移民ながらアメリカ建国の立役者のひとりとなり、今では10ドル札の肖像になっているアレクサンダー・ハミルトンの生涯を、ヒップホップ、ジャズ、R&B とブロードウェイが融合し描く歴史ミュージカル。あのバラク・オバマも大統領時代に二度観劇している。人種差別問題で世界が大きなうねりを見せる今こそ、深いメッセージの込められた本作を観ることは意義深いことだ。しかも、リン・マニュアル・ミランダをはじめとするオリジナルブロードウェイキャストで観ることができるのだから、ミュージカルファンにとって至福といえよう。

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